農家に嫁いだママたちのホンネ〜農家のママさん座談会〜
上士幌町に広がる十勝らしい畑の景色。皆さんは農家の生活にどんなイメージを持っていますか?今回は、結婚を機に上士幌で生活している3人のママ友さんに集まっていただき、初めて上士幌に来たときの気持ちや町での子育て、農家の奥さんとしての暮らしについてお話しいただきました。
WRITER
苅谷 美紅 (かりや みく)
北海道千歳市出身。テレビ番組ADをしていた東京生活から、青年海外協力隊としてブラジルへ。コロナ帰国後、MY MICHI2期生を経て、取材メンバーとして活動しています。マイブームは朝起きて熱気球を探すこと。
<座談会メンバー紹介>
2016年より上士幌町在住
増田 奈々子さん
30歳、江別市出身、3歳の男の子と1歳の女の子のお母さん。
2009年より上士幌町在住
早坂 友美さん
32歳、帯広市出身、10歳の男の子、7歳の男の子、3歳の男の子のお母さん。
2015年より上士幌町在住
楠 愛美さん
31歳、伊達市出身、5歳の男の子、3歳の女の子のお母さん。
農家に嫁ぐことになったときの気持ち
皆さん、結婚を機に上士幌町にいらっしゃったんですよね?ご結婚される前は、どちらにいらっしゃいましたか?
ずっと帯広です。実家からも出たことありませんでした。
私は札幌で働いていました。
私は大学を出たあと帯広で看護師をしていました。
上士幌町の第一印象を覚えていますか?
実は同じ十勝に住んでいながら上士幌には来たことがなかったんですよね。来て、最初にびっくりしたのが、スーパーの閉店時間が早いこと(笑)。あと町がすごくコンパクトなことにも驚いた記憶があります。
私は、夫とは高校生の頃にバスケ繋がりで知り合ったんですよね。私の地元で下宿をしていたので、当時は上士幌と聞いてもどこにあるのか知らなかったです。
農家に嫁ぐことになったときの気持ちって覚えていますか?
私は社会人になってから夫と出会って結婚したんですけど、特に農家への抵抗はなかったですね。今思えば農家というものがわからなかっただけかもしれないけど(笑)。
ななちゃん(増田さん)、抵抗あったって顔してるね。
…うん、最初はあった(笑)。それまで事務職だったから、そこから畑!?みたいな感じで。
私は子どものころから、お母さんが好きで山登りとかやってたんだよね。看護師のときも友だちと行ってたし。だから上士幌ってきっと自然が多い町なんだろうな、くらいの気持ちだったよ(笑)。
私、今だから言えるけど、結婚して初めて上士幌に来るとき車の中で泣いていました(笑)。
ほんと!?
自分でもなんで泣いてるかわからないんだけど、夫も「なんでそんなに泣くの!?」って(笑)。次の日から夫は仕事だったから、家に一人きりでしょ。それでまた泣いて。「帰りたい」って何度思ったことか(笑)。
来たばかりだと知り合いもいないし大変だよね。
私も最初は家族以外は知り合いもいないし、ずっと一人だったな。結婚してから2年くらいは3日に1回は実家に帰るっていう生活をしてた(笑)。それからJAの女性部に入ったり、あとは子どもが生まれてからかな。少しずつ横の繋がりができていったのは。
農家の仕事のこと、ご両親のこと
農家の仕事を手伝うことに対しては何か思いましたか?
何も知らなかったんですよね。結婚する前に一度だけ畑の作業を見にきたくらいで。植え付けをしていたんだけど、そのときは何してるかもよくわからないみたいな。「うわ、すっごい大きい機械が動いてるなー」という感想だけ(笑)。
ななちゃん(増田さん)は結婚する前に手伝ったりはしなかったの?
全くしてない。何回か家に来たことはあったけど、帯広で食べ歩きとかしていることが多かったかな。上士幌を堪能することは一回もなかった。
じゃあ、結婚してから「畑出るぞ」みたいな?
うん、結婚してから。8月に上士幌に来て12月に結婚式を控えてたんだよね。お義父さんとお義母さんも気を使ってくれて。「今年は畑に出なくていいからね、来たときはのんびりしてて」って言われたけど、家にいても一人だし、畑に出た方が気分転換になると思って1週間くらいで仕事を手伝いはじめた。ちょうど小麦が終わったときだったから、芋掘りからやって。やってみたら案外楽しい!って思ったんだけど、初めてトラクター乗ったときには酔っちゃって…
揺れるからね。
それが一番辛かったかな。二人は酔わなかったですか?
全然酔わない!車酔いとかしないからじゃない?
いや、車酔いは私もしない(笑)。
ちなみに、農家に嫁ぐとなったときに、皆さんのご両親はどんな反応でしたか?
心配はしていましたね。土も触ったことがなかったし。虫も嫌いだし(笑)。畑に出て私の足に大きな蜘蛛が登ってきて大騒ぎしたこともありました(笑)。
増田さんのご両親は?
泣いたことは言わなかったの?
言ってない。親には辛いとか、そういうのは絶対言わない。「頑張ってるよ」って伝えてる。
楠さんは?
私の両親はそんなに心配していなかったですね。
出身の伊達市も農家さんは多そうですよね。
多いですね。それこそ、私の妹も農家に嫁いだんですよ。
え、じゃあ二人とも農家なんですか!?
そうなのさ!
すごーい!姉妹で農家!
だからお互いに野菜を送りあったりもする。こっちからはジャガイモを送って、向こうからは葉物を送ってもらったり。
上士幌に住んでいるとジャガイモは困らないよね。うちは冬は毎日ジャガイモ祭りだよ(笑)。
私、結婚した年に知らずにジャガイモを買ったんだよね。
ええっ!?
結婚したばっかりのときね。なんでわざわざ買ってるの?って言われた(笑)。
あ、でも私も宅配で注文番号を間違えてジャガイモが届いたことがある(笑)。
一番嫌なミスだね(笑)。
農家を手伝いながらの子育て事情
皆さんは普段どのくらい働いているんですか?
私は収穫で忙しい時期とか、出れるときくらいかな。
なんだかんだ、子どもの送り迎えとか毎日予定ありますよね。
そう。送り迎えと病院も多いよね。この前なんて、帯広・音更を3往復したの。
子どもが怪我して、午前中に帯広の整形外科に連れて行ったんだ。その後学校まで送って、音更で買い物してたんだよね。そしたら「お子さんの咳止まらないのでお迎えをお願いします」って。念のため病院に連れて行ってということになったから、また音更まで戻って病院に行ったんだよ。
大変だったね(笑)。
お子さんの送り迎えもあると、農場の手伝いはなかなかできないんですか?
午前中だけとかなら手伝うことはありますね。引っ越してスクールバスになったから、少しは楽になったけど、通院とかで15時に迎えに行かなきゃいけない日も結構あって。午後はちょっと時間が中途半端なんですよね。
まなちゃんは働いてる?
収穫のときとかは普通に働いているかな。忙しい時期は朝は子どもを7時半にこども園に預けて、18時半に迎えに行くから、8時から18時くらいまでは働いてる。
まなちゃんは一番働いてると思う。去年は冬もずっと働いてたじゃん。
え!?冬も?
そうそう。長芋が終わった12月くらいから植え付けがはじまる4月まで上士幌クリニックで働いていたんだよね。今年は行ってないけどね。
お子さんと一緒に畑に出たりもするんですか?
コロナで自粛中は毎日畑までお散歩してました。子どもも体力がついてるから、「畑行く!」って走って行っちゃって私が取り残されたこともあります(笑)。
うちも、畑は行きますね。それこそ夏だったら、ビニールハウスで一緒にトマトやナスを穫ったりします。「これ自分で穫った野菜だよ!」と言うと食べてくれるんですよね。
へー!
なんかいいなあって。これが食育かな、みたいな。
楠さんも畑に連れて行きますか?
連れて行きますね。ずっと家にいるとゲームとかはじめちゃうから、外に連れてトラクターに乗せたりします。
うち、3人いるから誰がトラクターに乗るかでよく揉める(笑)。
トラクターはみんな乗りたいよね。
つい最近もあったんだよね、雪踏みをするのにパパが、「明日俺とトラクター乗る人誰?」って言うと、みんな「はーい!」ってなって。運転席の隣にもう一人座れるトラクターがあって、誰が座るかでひと悶着だよ(笑)。
わかる。うちも乗りたがる。
お手伝いはするの?
今年上の子は植え付けのイモ植えを手伝ったって言ってた。
機械に乗って?
そう。乗りながら手伝ったって。それこそ、ビートポットのときも一緒にハウスに入ってたよ。
うちも最近、上の子がこども園が休みの日になると自分から、「じじばばのところ(畑)に行きたい」って言うようになったな。
へ〜。
でも畑が広いから、連れていってもじじばばがどこにいるのかわからない、みたいな(笑)。
農家のママから見た町の良さ
もう上士幌での生活も慣れていると思いますが、改めて町の良さを挙げるとしたら?
私はやっぱり、こども園無料や医療費無料とか、子育ての補助が手厚いのがいいなあって思います。
漢検や数検も無料で受けられるもんね。そういう補助もありがたい。
子育てはしやすい町だと思う。
あと、冬のんびりできるのもいいなあと。夫が「メリハリがあるから夏頑張れる」ってよく言うんですよね。夏は忙しいですけど、1年を通して生活のリズムがあるから、それもいいなあと思います。
あと星がめっちゃ綺麗ですよね。
うん、本当に綺麗。感動しました、星は。
農村部は街灯もないからね。
星だけでなくて、農家さんだと家の周りでも夕日が綺麗に見えたりもするんですか?
綺麗ですね。特に芋掘りの時期は夕方まで畑にいるので。いつも芋掘りしながら沈む夕日を、めちゃくちゃ綺麗だなって見てます。
朝日もいいよね。それこそ朝4時半とかに畑に出たりすると、朝日がめちゃくちゃ綺麗。
やっぱり景色は綺麗だし、自然が感じられるのはいいよね!
上士幌の外から、上士幌町にやってきた3名のママさん。初めて町に来た当時の一人で不安だった気持ちや、子育てをする中での大変さ、そして、お子さんと畑に出る楽しそうな暮らしを垣間見ることができました。上士幌町に来る前は、東京の大学に行き、大都会で働いていた私ですが、同世代の3名の話を聞いて畑で作物と触れ合いながら子どもを育てるのも素敵だなあと、田舎暮らしへの憧れを抱き始めるのでした。
楠さん、増田さん、早坂さん、ありがとうございました!