子どもたちの生きていく力を育む「ナッツクルクル団」(後編)齊藤肇さんインタビュー
今回は、クラフトキッチンにて齊藤肇さんが主催する「ナッツクルクル団 アートスタジオ」に訪問。肇さんは、ナッツクルクル団は子どもたちの生きる力を育むための活動だとおっしゃいます。(前編)では、ナッツクルクル団の1日を紹介しましたが、その取材後に、肇さんからナッツクルクル団への思いを伺いました。
WRITER
西村 奈々子
大阪出身。父が上士幌に移住。大学卒業まで、父が愛した上士幌に来ている大学生。私もこの町を愛したい。好きな場所は、クラフトキッチンの2階のバルコニー。
ナッツクルクル団への思い
絵本の読み聞かせから始まるのが印象的でした。そこに理由があればぜひお聞きしたいです。
今回は「森の、たからもの」がテーマだったので、木に関する絵本を選びました。絵本からいろいろなことに興味をもつ心だったり、想像力が育まれたらなと思っています。
なるほど。詳しく聞きたいです。
例えば、絵本の中から「どの葉っぱが好き?」「今の季節の景色と同じものはどれだろう?」って子どもたちに聞いていくことで、子どもたち自身が木のことをいろいろと自分ごとにしていくんですよね。はじめは他人事のように眺めていた子も「え、どれだろう!」って眺めたときに自分のことになって。自分ごとになったあとに「木の本」で葉っぱのかたちを見せると「本当に僕はどれが好きだろう?」って真剣に考えてくれる。これによって、外に出たときにいろんなことに気がつくアンテナが研ぎ澄まされるようになるんです。
子どもたちが、だんだんと発言するようになって、興味を持ちはじめるのが見ていて伝わってきました。
いきなり絵本を見せて興味をもつ子もいれば、そうではない子もいます。みんなに短い時間で興味を向けてもらうようにするんですけど、そこで「こっちを向いて」とか「これを考えてみて」って指示をするんじゃなくて、ワークショップをやっていく中で自然と興味が向いてくるような仕掛けを作っている感じです。その土壌を作ることを本当に大切にしています。木の絵本を読み聞かせたあとに、外に出て実際の木を見ると、絵本の中の世界が自分ごとになって子どもたちはワクワクできるんです。
指示するのではなく、実際にやってみせる
素敵です。読み聞かせのあと、肇さんがレクチャーをしたときに、説明するのではなくて子どもたちと一緒にやっている印象がありました。そこにも意味があるのでしょうか?
「こうやります」って言わないようにだけ気を付けています。「私はこうやってみようかな〜?」と言いながら、子どもたちと一緒になってやるように心がけています。すると、「ここに貼ってみて」「こうしたらかわいい!」と子どもたちが自らのイメージを私に伝えてきてくれるんです。「指示するのではなくて、実際にやってみせることで自然に導いていく」を大切にしています。
そのほうが、子どもたちものびのびとできる気がしますね。
そうなんです。子どもたちがレクチャーのあとに、「やりたい!やりたい!」とやる気を見せてくれたら成功です。そこでもう私の役目は大体終わりです。ここまでで行った絵本の読み聞かせとレクチャーがその日の8〜9割を決めてしまうんです。F1でいったらもう、アクセル踏んだらブーンってスタートできちゃうような、その状況にしておかないと、短い時間ではできない(笑)。これを普通の幼稚園とか保育園でやるなら、時間をかけて段階を踏むんだけど。それを私は全部で2時間でやろうとしているから、こういうやり方になるんです。
材料が驚くほど充実していたのですが、そこにも何かこだわりがあるんですか?
子どもたちの作品のクオリティが下がらないように、材料にはこだわっています。自然と組み合わせても違和感のないもの。素材のせいで安っぽく見える材料は選ばないようにしています。
子どもたちのために、ほかにも気にかけていることはありますか?
透明人間になった気持ちでその場にいることです。提案はしますが、大人からこうしたらいい、などの「指示」は出さない。それはその場に居合わせた大人の方々にもお願いしています。子どもたちが思いのままに考えて、作れるように環境を整えるのが大人の役割なんです。
最後に、肇さんが理想とするナッツクルクル団のあり方を伺いたいです。
子どもたちはみんな生きていく力を宿して生まれてくると思っています。その生きていく力に期待する大人が増えてほしいと思っています。そんな可能性を持っている子どもたちにとって大人がお節介にならないようにしたくて。生まれながらに持っている本能を最大限に活かして子どもを育てることが、大人の役割だと思います。そして、その生きていく力を育む環境がナッツクルクル団でありたい、思っています。
肇さんがつくりたいのは、
子どもたちの生きていく力を育む
ナッツクルクル団