【先人から学ぶ】網走刑務所博物館とオホーツク流氷館を訪問

MYMICHIプロジェクトには「先人から学ぶ」というコンセプトの元、上士幌町民の方々からたくさんのお話を伺うことができます。しかし今日は少し思考を変えて、北海道全体の開拓の歴史について学ぶことに。北海道の開拓の歴史を学べる一つのスポット・網走市にある網走刑務所博物館・北方民族博物館にやってきました。

WRITER
伊藤 卓巳
三重県出身。MYMICHIプログラム2期生。青年海外協力隊としてウズベキスタンで観光業に携わっていましたが、コロナの影響で一時帰国。初上士幌どころか初北海道ですが、壮大な景色と美味しい食事に日々感動中。
監獄食堂で博物館見学前に腹ごしらえ
上士幌町から車で約3時間・網走市内に到着したのが11時半ごろで、お腹がめちゃくちゃ空いてしまいました。ということでまずは博物館網走監獄の見学前にランチを取ることに。
網走監獄の敷地内には、レストラン「監獄食堂」があります、お昼ご飯にぜひ行ってみましょう。名物は何といっても監獄食で、焼きサンマがつく監獄食Aと、

焼きホッケがつく監獄食Bがあります。

微妙な響きの監獄食ですが、サンマもホッケも大ぶりでさすが北海道、大満足の味です。
その他網走のB級グルメ網走ザンギ丼や、網走産豚肉を使った網走ポーク丼もおすすめ!

ポーク丼のどんぶりは、現在の網走刑務所の受刑者が作ったものです。

お腹が一杯になったところで、いよいよ博物館網走監獄の見学スタートです!
博物館網走監獄で北海道開拓の歴史を知る
いよいよ網走監獄の見学スタート!
網走と聞けばまずイメージされるのが刑務所。博物館網走監獄は、明治時代から使われていたかつての刑務所の建物が移築保存された貴重な博物館です。入口から入ってまず目に付くのが、レンガ造りが印象的な風格ある正門。


それをくぐると見えてくるのが、洋風建築風のデザインの庁舎です。言われなければ刑務所の建物だと気づかないほどおしゃれな建物。

館内では刑務所や囚人による北海道開拓の歴史が展示されています。

網走だけではなく、空知や十勝、釧路といった他地域についても詳しく紹介されています。
明治維新後、政府はロシア帝国の脅威に対する防衛の必要に迫られていました。目をつけられたのが当時急増していた政治犯などの囚人で、「囚人を労働に使っても賃金が安く済むし、亡くなったとしても監獄費の節約になる」という今では考えられない理由により、彼らを労働力として北海道の開拓を進めることになったのです。
1881年(明治14年)空知地方に樺戸集治監が作られたのを皮切りに、空知集治監、釧路集治監と次々と監獄が作られ、全国から囚人が集められました。そして1890年(明治23年)、網走刑務所の前身となる網走囚徒外役所が作られたのです。

この展示によれば、北海道全土で囚人たちが開墾した土地の総面積は1,700万平米、開削した道路の総距離は724kmとなっています。北海道の開拓は、囚人たちの重労働があってこそだったのだと心に刻まれます。
開拓時代の生活の様子を垣間見る
再度、外に出てみましょう。庁舎と対照的な木造長屋の建物が網走刑務所職員官舎。

この地にやって来たばかりの看守たちが住んでいました。囚人たちの空間とは別世界の、古きよき日本家庭といった様子が再現されています。当時の服を着ることもできますよ!

そして、登録有形文化財の裏門をくぐり…。

休泊所を見学。刑務所から離れた地で労働する際使われた簡易宿泊所、いわゆるタコ部屋で、特に網走刑務所で最も過酷な労役だった中央道路開削工事のときに「動く監獄」として使われていました。

熾烈な環境にもかかわらず、ござと木の枕だけで寝泊りしていた様子が展示されており、衝撃を受けます。枕が一本の丸太として繋がっているのは、起床時にこれを叩いて全員を起こすためだったとのこと。

その近くにあるのが耕転庫と漬物庫。

どちらも囚人が働いていた施設で、漬物庫では中に10人ほど入れそうな巨大な樽が置かれています。

そしてひときわ目立つ建物、監獄歴史館へ。
見ごたえがある展示物が並ぶ中、




「顔が指名手配犯みたい」と定評がある(笑)私が体験してみました。プリクラのようなノリかと思いきや、「仮入所はこっちだぁ!」「さっさとしろ!」などなかなか煽ってくる音声つき。

ということで、なかなかクオリティが高い写真が撮れました。これで昔の受刑者気分!

さあ、次はいよいよこの監獄歴史館の最大の目玉である「赫い囚徒の森」体感シアターへ向かいます!!
監獄歴史館最大の目玉「赫い囚徒の森」体感シアターへ!
この監獄歴史館の最大の目玉が、「赫い囚徒の森」体感シアター。中央道路開削工事の苛酷な環境が五感で迫ってきます。

中央道路はオホーツク沿岸から内陸部へ向かう、網走から北見峠までの道路です。ロシア帝国の脅威に対抗するため、網走刑務所の囚人たち約1,200人を動員して1891年(明治24年)に工事が進められました。
当然現在のような町もなく、険しい原生林を切り開いての工事はとてつもない重労働でした。工事が強行された結果、わずか8カ月で163kmの道路を切り開くことに成功しましたが、その代償は大きく200人ほどが亡くなったといわれています。その亡骸はそのまま現場へ捨てられ、その後鎖を墓標に埋葬されることになり、そこを鎖塚を呼ぶようになりました。現在は沿線各地に追悼碑が建てられています。

シアターを通して、重労働の苦しさや亡くなった囚人たちの無念さが胸に迫ってきました。北海道の発展は、このような尊い犠牲があってのことなのです。
庁舎内での展示の通り、これ以外にも囚人が開削した道路が北海道には多数あります。旅行中に何気なく通っている道路も囚人が造ったものかも知れないと考えると、また違った思いが芽生えることでしょう。
シアター近くには、タコ部屋の寝心地が体験できる場所も。

現在の刑務所の様子も紹介されています。凶悪犯が集まってそうなイメージの網走刑務所ですが、現在は執行刑期10年以下の受刑者(B級受刑者)を収容しています。


そして博物館網走監獄最大の施設、官舎へ向かいます!

5方向に伸びるユニークな形状の官舎
中央見張台を中心に、放射状に5つの舎房が伸びているため「五翼放射状房」と呼ばれており、独特でユニークな形状です。

こうすることで看守が見張りやすくなるのだとか。

内部は天窓がつけられているため太陽の光で明るく、暗く居心地悪そうという監獄のイメージが覆ります。

廊下に沿って雑居房や独居房がずらっと並んでいますが、ここにも一工夫が。格子は斜めの形になっており、暖気や換気が確保でき、なおかつ廊下からは房内が見られるのに向かい房同士は見通せなくなっています。

ところどころ収容体験ができる房も。
こちらは小説やドラマにもなった脱獄魔が入っていた、第4舎24房。この脱獄魔のために床が強化する改造を施したのに、やはり脱獄されてしまったのだとか。
官舎から少し離れた場所に浴場があります。
受刑者の入浴時間は厳格に定められており、3分で脱衣し、3分で第1槽に入浴、3分で体を洗い、第2槽の入浴に3分、そして着衣に3分と、脱衣から着衣まで15分間で入浴できるようになっています。
ほかにもこんな見どころが!
ここまでさまざまな施設を紹介してきましたが、まだまだこんな見所どころもあります。
こちらは二見ヶ丘農場で、囚人たちの食糧生産を担う農場と、それに付設する施設です。

作物を育て、収穫するのも囚人の仕事でした。二見ヶ岡農場は現在も残っており、受刑者たちが育てた牛は網走監獄和牛というブランド肉になっています。

さらにお土産屋に行くと、全国でもここだけしかない網走刑務所グッズの数々が!

正直、ここまでネタにして大丈夫なのか!?と思ってしまいました…。

現在の網走刑務所はここから車で5分ほどの距離にありますが、ここは正門までであれば入ることができ、刑務所作業製品展示場では受刑者が製作した木工品などが売られています。

網走名物の木彫り人形、ニポポ人形もここで購入可能。

最果ての監獄といったイメージの網走刑務所ですが、百聞は一見にしかず。刑務所のイメージを180度変えてくれる、見ごたえあふれる博物館でした。急ぎ目に見て回っても2時間ほどかかったので、時間に余裕を持ってじっくり見学するのがおすすめです!
マイミチ2期生の網走旅、最後はオホーツク流氷館に向かいます!
オホーツク海のことなら何でも分かる! オホーツク流氷館
博物館網走監獄で北海道開拓の歴史を学んだ私たちマイミチ2期生。網走の土産も調達したところで、この旅最後の目的地、網走監獄から車でわずか5分のオホーツク流氷館に。時刻も15時半になりました。
オホーツク流氷館は、網走の街を見下ろす天都山山頂に立つ3階建ての施設。

3階は屋外展望台となっており、遠く知床半島までも望むことができます。

1階はお土産ショップ、2階はカフェ・レストランとなっており、メインの施設は地下1階。
まずは流氷幻想シアターで、流氷の風景やオホーツクを生きる動物の生き様を臨場感あふれる5面シアターで鑑賞しましょう。

ここでは実際にオホーツク海に住む生き物を展示しており、ユーモラスな姿のフウセンウオやフサギンポなどを見ることができます。
そして何といっても人気なのがクリオネ! 水槽の中を神秘的にゆらゆら泳いでいます。

本物の流氷に触れるここだけの体験ができるのが、流氷体感テラス。スタッフの方に濡れタオルを渡され、マイナス15度の世界へいざ!

大型冷凍庫に閉じ込められたような、なかなか体験できない気分です。
そこかしこにある流氷は計100トンもあるとのこと。

濡れタオルを振り回せば、あっという間にカチンコチンに固まってしまいます。

最後に味わってほしいのが、そのままのネーミングの流氷ソフトクリーム。伊達に流氷と名乗っておらず、なんとオホーツク海の塩をまぶしたソフトクリームなのです!

インパクトがあるのは名前と見た目だけではなく、味も然り。ベースのキャラメル味とオホーツクの塩が絡み合った食べやすい味です。
このソフトクリームをプロデュースしたジェラート専門店「Rimo」のオーナーは、ジェラートの国際大会で優勝経験があるのだとか。
目でも体でも口でもオホーツクを楽しめ、充実した見学になりました!

この近くには北方民族博物館という興味深そうな博物館もあるのですが、あいにくこの日は休館日で見学できず。今回は日帰り旅なので、中心市街地や港方面には立ち寄らず、このまま帰路につくことに。
予想以上に見どころが多い街で、できれば1泊はしたい! と思ってしまった網走日帰り旅。しかし博物館網走監獄で北海道の歴史を、そしてオホーツク流氷館でこの地が誇るオホーツク海の魅力を知ることができ、充実した1日でした。