仕事解決人!町の困りごとが仕事に?そしてやりがいに!
まちづくり会社が運営している「かみしほろ人材センター」では、上士幌町の法人や個人から短期で簡単な仕事の依頼を受け、人材センターの会員の方に仕事を行ってもらう仕組みがあります。センターの会員の方には、これまで培ってきた「得意なこと」や「できること」を生かしてもらっています。「庭の剪定作業」を請け負っている寺戸勝広さんは、趣味で続けていた庭作りの知識を生かして、やりがいある仕事ができていると言います。(制作:ホロロジー編集部)
プロフィール
寺戸 勝弘さん
|てらど・かつひろ|音更町出身。高校卒業後、上士幌町へ。上士幌町役場に勤務。定年退職後は地域活動にも従事し、近年は「かみしほろ人材センター」に登録し、庭木手入れや草刈りなどで地域のために貢献している。
趣味が仕事に
寺戸:なーに?今日は僕が話をするのかい?そんなに面白い話はないよ?
――いえいえ。いつも通り働いている姿を見せていただければと思っていますので、本日はよろしくお願いします!
といいながら、早速、庭に足を運んで、本日作業を請け負った坂本さん宅のお庭を案内していただきました。
寺戸:ちょうど今、最後の仕上げをしているところだから見ていってよ。
――ありがとうございます!
寺戸:坂本さんのお庭は立派でね。帯広の職人がいる園芸屋さんに造ってもらったそうなんだ。そんな職人さんが丹生込めたお庭を、僕なんかが剪定していいのかって。最初、話をもらったときは、恐れ多く戸惑ったんだよ。
――それでもやってみようと仕事を請けられたんですね。実際に剪定されてどうでしたか?
寺戸:大変だったけれど、やりがいがあったよ。はじめて剪定し終わったときには喜んでもらってね。「来年もよろしくね」って、坂本さんに言ってもらったんだ。嬉しかったし、自信になったね。もっと頑張ろうと思えたんだよ。
――それはすごく嬉しいですね。
寺戸:坂本さんは木を知っているからね。だから楽しみでもあるし、もっと勉強をしないとなあと思いながら、剪定の時期を迎えているよ。ありがたいことに、去年(2019年)より依頼が増えていてね。この時期はとても忙しくさせてもらっているよ。
――寺戸さんはいつから庭づくりをしているんですか?
寺戸:21歳くらいのときかな。趣味でね。木は枯らしたりと、何回も失敗したけど、楽しいもんだ。
――庭作りの楽しみってなんですか?
寺戸:昔はね、よく山に行ってたんだよ。道路を造るために木を伐採するでしょ。伐採した木を販売する催しが昔はよくあったんだ。自分で見に行って「この木をください」って言ってね。値段を付けてもらうのさ。手配したトラックで運んで自宅まで持って帰ってきてね。それを育てるんだよ。
――豪快な趣味ですね!
寺戸:結構、仲間がいたんだよ。流行っていたのもあるしね。でもね、持ち帰った木は中々根が張らなくて枯れちゃうんだ。失敗ばかりさ。でもたまにしっかり育つんだよ。それが嬉しくてね。友人と競っていたりして楽しんでいたんだ。
――成長を見るのが楽しいんですね。
寺戸:そうだね。売買をすることもあるんだ。うまく育つと高く売れるんだよね。でも、自分がうまく育てた木が「●円」って言われたら、途端に手放したくなくなって売らないんだ。それで売れないまま枯らしてしまったりもしたもんだ(笑)。
――だんだん愛おしくなるんですね。子供を育てるのと同じ感覚なんですかね。
寺戸:人生みたいなもんだよ。
剪定の仕事が元気の源
――昨年はご病気もされたと聞きました。
寺戸:2019年の2月に胃がんが判明して、摘出手術をしたんだよ。75歳でね。ステージ1で、発見が早かったから大事には至らなかったんだ。でも手術後はあまり食べられなくなって痩せたよ。
――痩せてるようには見えませんでした。筋肉もありますし!
寺戸:作業のおかげで体力はちょっとずつ戻ってきたかな。筋肉はあるよ。鍛えているからね(笑)。
――剪定の仕事が元気の源になっているんですね!
寺戸:それでも体力はまだ戻ってないという思いはあるけどね。元々はもっと太っていたんだよ。今は痩せているのを気にしているくらいなんだ。でも調子はいいんだ。餅もたべるし、食欲はあるよ。
――たしかに、作業を見ていたら楽しそうでした。
寺戸:庭木を触っているしね、楽しいよ。しかも庭木の仕事は、ただ切るだけじゃなくて、日々勉強だからね。今でも機会があればいろんな庭を見てるんだ。あの庭はああしてる、この庭はこうしてるって勉強しているんだ。
――長年、触れていてもまだまだ勉強されてるんですね。
寺戸:そうだね。そして、依頼があったら、この庭はどうしたら喜んでもらえるかな?って考える。大体イメージ通りにできるようになってきたんだ。だからこの仕事にはとてもやりがいを感じているよ。依頼主さんにも感謝だし、関係を繋いでくれるまちづくり会社の皆さんにも大変感謝しているよ。
昔から負けん気が強くて
――寺戸さんは生まれも育ちも上士幌町なんですか?
寺戸:出身は音更町。農家の次男なんだ。
――いつ上士幌町に来られたんですか?
寺戸:高校を卒業した後だね。次男だったけど、家では跡取りとして農家を継げと言われていたんだ。同級生で農家が3人いたんだけど、土地面積がどれも敵わなくてね。僕の家は面積が小さくて、勝ち目はないなと思って嫌になって、親の言うことを聞かなかったんだよ。それで、親戚のおじさんが上士幌町にいたから、紹介された役場の臨時の仕事を始めたときに上士幌町に来たんだ。
――寺戸さん、負けん気が強いんですね。
寺戸:ハハハ、そうかもね。そして2年半くらい臨時の仕事をしていたら、運転手として大型免許を取れば採用できそうだっていう話があってね。親が運転手やるならダメだって言ったんだけど。親に黙って大型免許を取得してね。役場に入っちゃったのさ。
――やっぱり親のいうことは聞かないんですね(笑)。その後、苦労とかはありましたか?
寺戸:50歳になった頃に、運転手は民間に委託するから採用しない方向になって。だから運転手の仕事はなくなって、事務の仕事を始めたんだよ。役場でワープロ仕事。なかなか覚えられないのさ。30年も運転手してて、事務の仕事をするのは大変だったね。でも辞めるという選択は自分の中ではなかったからなんとか頑張ったね。
――持ち前の負けん気で乗り越えられたんですね。すごい。
寺戸:今は自分が楽しんできたことで、お金がいただけるというのは大変ありがたいことだよ。
――上士幌町での今の楽しみはなにかありますか?
寺戸:月曜と木曜にスポーツセンターで卓球やってるんだ。今まで40年続けてきたよ。
――40年ですか!試合にも出てるんですか?
寺戸:出てたんだけどね、今はメンバーが揃わなくて出場できないんだよ。メンバーが7人揃ったらいけるんだけど、なかなか揃わなくてね。誰かやる人いないかな?探してきてよ。
――上士幌町の皆さん、ぜひ卓球しましょう!
寺戸:上士幌町の中学校の卓球部なんかは、最近、指導者が素晴らしくて、全国大会にも出るようになったんだよ。上士幌町で卓球が盛り上がるといいね。
と、最後は少しだけ寺戸さんの日常が垣間見えるお話をさせていただきました。寺戸さんにはほかにもあんこ作りを教えてもらう取材にご協力いただいたりと、私たちにとても優しく接してくれました。
人が住んでいれば、そこには何かしら小さな困りごとがある。その困りごとは自分では解決できないけれど、それぞれの得意なこと、やりたいことを活かせば解決するかもしれない。
寺戸さんにとっては、「かみしほろ人材センター」で町の人たちの役に立てることが大きな生きがいになっていました。今後も町の解決人が増え、解決人たちを追って紹介できるといいなと思わせてくれる取材でした。
寺戸さん、ありがとうございました。