趣味が仕事に!?地元上士幌町に帰って来て~アメリカンフラワーに魅せられて~(前編)
上士幌町出身でホロロジーでライターしている宮部あやかです。今回、取材をさせていただいたのは私の一つ上の先輩、八重樫ゆいさん(以下:ゆいちゃん)です。ゆいちゃんとは中学高校と一緒でしたが、部活が一緒ではなかったので、挨拶を交わす程度の接点しかありませんでした。ゆいちゃんは高校を卒業したあと町を離れたのですが、あるとき上士幌町に帰って来るという情報を入手。ただの帰省ではなく、フラワーデザイナーとしてなにやら面白いことを始めるらしいのです。これはお話を聞くしかない!と思い、さっそく連絡を取ってみました。すると、「連絡をくれて嬉しい!ぜひ会いたいです!」とお返事が!
前編では、ゆいちゃんの高校卒業後の進路についてと、就職してから現在に至るまでのお話を聞かせていただきました。後編では、ゆいちゃんに教わりながらアメリカンフラワー作り体験をさせていただきました。
WRITER
宮部 純香
上士幌町で生まれ、高校まで上士幌で過ごした編集サポートメンバー。小さい頃からお世話になった上士幌を新しい視点で見てみたいと取材を進めています。
八重樫 ゆい
上士幌町出身。18歳まで上士幌町で過ごし札幌へ。専門学校卒業後、就職。フラワーデザイナー1級、アメリカンフラワー講師までの資格を取得。
地元でアメリカンフラワー教室を開きたい
お会いするのは、高校のとき以来ですよね。
そうだね。でも、中学高校と一緒だったけど、そんなに接点はなかったよね。
そうですね。高校を卒業した後は札幌に進学したんですよね。どんな学校に通っていたんですか?
ファッションの専門学校に進学したよ! 高校生のときにリクルートの冊子が届いて、あなたは何が向いてるかという診断テストをしたら「スタイリスト」って出てきて「たしかに!」と自分で納得したのがきっかけかな。おしゃれするのが好きだったから、ピンと来たんだと思う。
その診断テスト、私のときもありました。
その後、プレスクールに行ってみたら楽しそうだなと思って、特待生試験を受けて特待生になったの。試験は面接だったんだけど、事前に「3分間自己PRしてください。何をしてもいいですよ」って言われていて。吹奏楽でトランペットをやっていたので、「ハトと少年」を吹こうと思ったの。でも、当日の面接官2人がその楽曲を知っているような年齢には見えなくて。そこで急きょ笑点のテーマに変えて演奏したんだ。そしたらめっちゃウケたの。すごく失礼な話だけどね(笑)。
アドリブがすごいですね(笑)。
その後にいくつか質問を受けたんだけど、「なんで笑点の曲吹いたの?」って聞かれて終わったんだよね。それで合格。奇跡だったと思う(笑)。
進学するときは、初めから札幌に行きたいって思っていたんですか?
うん。近くにはファッション関連の学校がなかったから、札幌に行こうかなって思った!
専門学校を卒業した後も札幌で働いていたんですか?
うん、エステティシャンになったの。でも、働いているだけじゃなくプライベートでも趣味がほしいなと思って。何が良いかなって考えて、パっと浮かんだのがフラワー教室と陶芸教室とドラム教室だった。
ドラムだけなんか系統が違いますね(笑)。
そう(笑)。それで調べていたら自宅の一番近くに、今も通っているフラワー教室があったの。その教室が全国に150校しかない公認校ということが分かって。そこの先生が77歳になるんだけど、香港とか台湾で講演を開いたり、中国の昇格パーティに招待されたりするすごい人だったんだ。
たまたま近くにあった教室が、すごいところだったんですね。
電話をかけてみたら、「来週レッスンあるからおいでー」って。さっそく行ってみたら、「すごい!八重樫さん才能あるわー!」って言ってもらえて(笑)。その日に先生のお家のお庭に案内されて、「習ったらいいよ絶対」って強く言われたの。
急展開ですね。教室ではどのようなことを習っていたんですか?
主に生花のフラワーアレンジ!ここは公認校だから資格を教室で取れるの。私は資格を取りたかったから実技試験の練習を基本的にしてたよ。本当はアメリカンフラワーをしてみたかったの。フラワー教室のホームページを見て一番最初に目に入ってきたのが”アメリカンフラワー”だったんだ。先生に「このコースを希望しています」と話をしたら、「アメリカンフラワーは花を作るから、そもそも花を知らないと作れないよ」って言われて。「たしかになぁ・・・」って(笑)。それで、まずはフラワーデザイナーの資格を取ることにしたんだ!
作るということは、違う素材を使って花を作るってことですか?
そう!ワイヤーから作っていくの。1本のワイヤーをリング状にして、花びらのひらひらも自分でつくって、そこから合成樹脂の液にくぐらせるとシャボン玉みたいに膜が張るんだよね。それを乾かして必要な枚数だけ作って、組み立てて一つの花を作るの。
なぜ、興味を持ったんですか?
純粋にきれいだなって思ったから。昔から透明なものが好きだったんだよね。泡とかガラスとかスライムとか。
スライム(笑)。
可愛いって思ってて、透明なものが好きだから。
教室には何年くらい通ってるんですか?
今年で4年目かな。まだ通い続けてるよ!
上士幌町から札幌市に通っているんですか?大変じゃないですか?
そんなに頻繁に通っているわけではないから、そんなに大変でもないかな!一番遠いところで中国の生徒さんがいるの。日本だったら仙台かな。北海道内でも稚内や釧路から来てる生徒さんもいるよ。
大きな教室なんですか?
大きくはないけれど、生徒さんが多い教室かな。
当時はどのくらいのペースで習いに行っていたんですか?
月に3回。本来は1レッスンずつのところを1日3レッスンずつ入れてもらって、合計12レッスン!
かなり通い詰めたんですね(笑)。
なんとかフラワーデザイナー資格の1級までを1年で取得して、またすぐアメリカンフラワー講師の資格を取得するために教室に通って、無事講師になれたの!
講師ということは自分で指導もできるということですか?
フラワーデザイナー協会にも入っているから、自分で開こうと思えばアメリカンフラワーの教室も開けるよ!
お花といわれたらフラワーアレンジメントか、生け花くらいのイメージしかなかったので、そういった資格があることも知りませんでした。
そうだよね(笑)。そもそも「フラワーデザイナー」と「フローリスト」と「フラワーアーティスト」がいて、それぞれちょっと違うんだよ。フローリストさんはお花屋さん、花を制作する人。フラワーデザイナーは頼まれたものを販売する人。フラワーアーティストは自分の考えたものを販売する人なの。私はフラワーデザイナーの資格を持っているから、販売することも教室を開いて教えることもできるの!
そういった違いがあるんですね。
私が今やっているアメリカンフラワーは、日本でやってる人はまだ少なくて中国の方が多いの。でも去年、一昨年くらいから日本のウェディング業界にもアメリカンフラワーが出てきているから、これからもっと身近になると思う。
アメリカンフラワーって、出来上がったものは商品として売るんですか?
後々販売していきたいな。アクセサリーを作ってる人もいるし、インテリアとして作ってる人もいるし、さまざまです。でもそこまでだったら、器用な人なら見様見真似でできるよ!(笑)。アメリカンフラワーの資格を持っている人はアメリカンフラワーを活けたり、束ねたりして展示会に出品することもできるの。だから今年は出品しようかなって思ってるよ!
作ったものを見せてもらうことはできますか?
もちろん!これがアメリカンフラワーなんだけど、
うわー、綺麗!
でもこれくらいだったら経験がなくても頑張ればできるますよ。
いや、無理ですね私には(笑)。
プロのレベルになってくると、1m以上ある作品を作っている人もいるよ!
これ花だけじゃなく葉とかも全部作るんですか?
葉とかも全部。枝とかも自分で作る!
触ってみてもいいですか?割れたりとか・・・。
大丈夫だよ!(笑)。
あ!見た目と全然違いますね!もっとガラスっぽいのかと思ったらビニールみたいな、膜が張っている感じですね。この大きさのものでどれぐらいの時間がかかりますか?
これは一輪で2時間ぐらいかかるかな…
2時間で作り上げるときは、休憩を挟まずにずっと作業してるんですか?
そうだね。8時間くらいずっと動いてることもあるけれど、全然苦じゃない!
趣味が仕事になることに抵抗感はないですか?
いや、全然ない。むしろ幸せ(笑)。
趣味が”やらなきゃいけない”ことになるのが嫌だという人もいると思うんですけど、ゆいちゃんはどう考えているのかなと思って。
職種にもよるのかなって思う。同じクリエイター仲間に、「休みの日なにしてるの?」って聞いてみたら、「基本毎日休みだよ」って帰ってきたことがあって。でもずっとその人仕事してるんだよね(笑)。全然休んでないの(笑)。そういう人たちが周りに多くて、毎日刺激をもらってる!
趣味を仕事にできる人が周りにも多いんですね。そういった人たちとつながるきっかけって何ですか?
ありがたいことに紹介してもらえることが多いかな。
それは直接ですか?SNSでつながった人から声がかかるとか。
直接!そして呼ばれたら行ってみる!フットワークは軽いね。そこで出会った人もたくさんいるよ。人との出会いを大切にしてる。
紹介されるのをただ待っているというよりは、自分から輪に入っていってるように思えますね。
そうだね。例えばお花関係の人だったら、作品を見て「この子は考え方が違うよ」って紹介してもらえることが多かったりするかな。
ゆいちゃんとは違うスタイルの作品を作っている人、ということですか?
そうそう。すごくご縁を大事にしてる!それと挨拶。地元に帰ってくると、お世話になった方に挨拶まわりはしっかりしてるよ。
昔からですか?
昔から。学生の頃に札幌から帰ってきたときも、お土産もって「帰って来たよ」って。全員ではなくて行ける人だけなんだけどね(笑)。そういうのは結構あったかな。
大事ですよね、つながりって。今回上士幌に帰ってきた理由は何かあるんですか?
上士幌町にはフラワー教室がないよね?それなら私がやっちゃおう!って思ったの!お花が好きな人はたぶん多いと思うんだけど、フラワーデザイナーをやってます、っていう人はいないし。札幌にはたくさん教室があるから、それなら上士幌でやろうと思って。
たしかに、趣味でやりたいという人もいそうですね。どうですか、高校生のとき以来ですよね、上士幌に住むのは。当時と印象は違いますか?
そうだね、新しいものがどんどんできていて、変わったなという印象はあったかな。
7年も経つと、だいぶ変わっていますよね。もうすでに、フラワーデザイナーとして上士幌で活躍されているのですか?
まだ本格的にはしていないけど、春から少しづつ動いていきたいなと!実は2017年くらいから、ドリームドルチェさんでハーバリウムを販売してるんだよ!札幌にいるとき時から自分でキャンドルとかハーバリウムも作って売ってたから、教室を開いたらアメリカンフラワーだけではなく、キャンドルやハーバリウムも生徒さんたちと作ってみたいな。
この先もずっと上士幌町でお仕事をしていこうと思っていますか?
どこでやっていくかはあんまり決めてないかな。今は上士幌町にいるけど、今後どう流れが変わっていくかもわからないから。あと、アジアとの交流ももっとできるようになったら良いなと思ってるんだ!
海外にも目を向けているんですね。
21歳のころからアジアはずっと考えていたかな。だから一昨年、先生が中国に行くときに、「私もアシスタントで行きたいです」ってお願いしていたの。でも、そこからコロナが流行りだしちゃって流れちゃったんだ…。
ちなみに、アメリカンフラワー作りの体験をさせてもらうことはできますか?
いいよ!やってみようか!
やった!お話し聞きながらやってみたいなって思ってたんです(笑)。
今後の夢を語るゆいちゃんは、きらきら輝いていてとてもかっこよかったです。趣味から始めたフラワーデザイナーの道が仕事になる。お話を聞いていて、私も”自分のやりたいこと”に向き合おう、やりたいと思ったことは何でもチャレンジしてみよう!と思いました。
後編では、アメリカンフラワーを実際に作らせていただけることに!いったい、どんな花をどのようにして制作していくのでしょうか。お楽しみに!