広大な農地を家族経営する上士幌農家さんの秘密とは!?
十勝には豊富な食べ物や農地がたくさんあり、本州ではなかなかできないような広大な土地で農家を営んでいる方がたくさんいます。私が参加した「MY MICHIプロジェクト」では、上士幌町の農家さんを見学するプログラムがあり、高橋農場さんを見学させていただきました。
WRITER
白髪 憲一
MY MICHI 2期生。1995年生。大阪府出身。北海道に上陸するのは今回が初めてですが、上士幌町の魅力にどんどん魅了されて移住検討中。自分が体験、取材して感じた感動を発信したい!
高橋農場さんは、家族経営で50ha(ヘクタール)の農地を保有している農家さんです。50haはなんとあのディズニーランドとほぼ同じ! かなりの広大な土地だということがわかります。
ちなみに全国の農地面積の平均は2ha、北海道の平均は25haと言われていますが、これが十勝管内になるとその平均が40haまで大きくなります。全国的に見ても、北海道的に見ても大きいのがわかりますね!!
こんな広大な土地を家族だけで経営できているのはどんな秘密があるのでしょうか!? 今回はそれを紐解いていきます!!
今回案内をしてくださったのは、高橋農場のご主人、高橋昭博さんです!!
海外での農業研修などにも参加されたり、農業の最新技術も取り入れ、アスパラ栽培など新しいことにも挑戦し、農地も今後どんどん広げていきたいと考えている十勝農業のプロフェッショナルです。では早速秘密に迫っていきましょう!!
まるで宝箱!! 高橋農場さんの3つの倉庫
到着してまず驚いたのが、「えっっめっちゃ広い!!」
広大な土地に小型のスーパーマーケットくらいの倉庫が3つ!! この倉庫の中に全ての秘密が隠されていました!!
見てください、この大きさ!!
これだけ大きい農業機械は、本州では中々お目にかかることのできないものだと思います!!
この機械はポテトハーベスターといって、じゃがいもを収穫しながら石を分別する機械なのだそうです。格納されている状態でも観光バス2台分くらいの大きさがあって、最大幅は6メートル以上、全長は約8メートル、全高も3メートル以上になるそうです。この機械の重さだけで5トン以上あります。
このハーベスターが広大な畑を駆け巡る姿、想像するだけで迫力満点です。保有している機械は用途の違うものがほとんどで、家族だけで農作業をするには欠かせないものだそうです。
ほかにもいろんな機械がたくさん!!
この機械はロータリーリッジャーといって、じゃがいもを理想的な環境で育てるための畝(うね)を作ってくれます。ちなみに畝は野菜を植える土の小さい山です。
こちらの機械はポテトプランターといって、種いもを植える機械です。タンクに種芋を入れておけば自動的に種いもが植えられていく画期的なシステムです。上から覗くとレールがあって、種いもが一つひとつレールに乗って植えられていきます。
たくさんの機械がある理由とは!?
家族経営の農家でなぜこれだけたくさんの農機を保有しているのか、高橋さんに詳しいお話をお伺いしました!!
機械の種類がとても多くて、ご家族で営んでいるとは思えないほど凄い設備ですね。
そうですね。今見てもらった機械の中にはそれほど使用頻度の高くないものあります。それこそ年に1日しか使わないものもあります。
え!! 1日ですか!? それでもリースやシェアではなく、購入することには何か理由があるんですか?
1日しか使わない機械でも購入するのは、作物の品質を落とさないためです。普通の経営者であれば非合理的な仕事をしていると思うかもしれないですよね。ですが農作物を育てる過程では、どうしてもこの作業はこの日に、という適正日があるんです。町で同じ作物を作っているほかの農家さんと共同でその作業のために農機をシェアすることもできますが、それでは適正な日を逃してしまうかもしれない。品質を落とすのであれば業務委託でもできますが、私たちは自分たちで良い品質の作物を作って届けたいんです。
非合理であったとしても作物の質を追求しているんですね。今まで当たり前だと思っていた野菜って、さまざまな過程を経ていることもわかりました。今後も人が美味しく食べられる安全な作物は必ず求められると思います
ありがとうございます。実は昔、自分たちで作った作物を販売していたこともあったのですが、今は良い野菜や作物を育てようと思ったら、販売はJAに任せる方が良いと思っています。やはり私たちは良い作物を作ることが仕事なので!!
すごく心に響く素敵なコメントをいただき、食とは何か、仕事とは何かを考えさせられました。
成長し続ける農機の機能
我々が大きい機械に見惚れていると、高橋さんが「乗ってみなよ!!」と声をかけてくださいました。ここはご好意に甘えてみます。
子どもの頃、男の子の多くは働く自動車に憧れていたのではないでしょうか? かくいう私もその一人。小さい頃の夢が一つ叶い、懐かしくも新鮮で楽しい体験でした。
運転席はまさにパノラマ、全体が見渡せるような広い視野の特等席です。まさに戦国時代の将軍になった気分!!
このトラクターは大きいだけではありません!! なんと!! GPSがついていて自動でハンドルが回ってまっすぐ進んでくれる機能が!!
レバーを押すだけで自動でまっすぐ進んでくれました。
ゴールドペーパードライバーのメンバーでもまっすぐ走らせることができて、技術の進歩に驚きを隠せません。
このシステムを導入するだけで、トラクターに乗ったことのない人でも1週間もすれば経験年数10年くらいのベテラントラクター運転手になれる……かも。
農業機械の技術進歩は生産性を大きく上げ続け、今までセンスや技術がある人しかできなかった仕事が誰でも簡単にできる時代になっていくのを感じます。そして元々技術を持っていた人はより専門的に作物を育てることに集中できるようになっていくのが、これからの未来の農業なのではと感じました。
高橋さんは4年に一度開催される国際農機械展で、最新の農機などを見学調査されているそうです。その中には全自動で運転するロボットトラクターなど、最新テクノロジーを用いた農機が展示発表され、そこで情報収集や今後導入できそうなものをリサーチするそうです。
常に情報のアンテナを張り巡らして、それをどんどん取り入れる姿勢、本当に尊敬します。
農機よりも夫婦で楽しんで仕事をしているのが一番の強み!!
そんな高橋農場さんですが、設備や広大な土地よりも夫婦で楽しく仕事をされているのが見学を通してすごく伝わってきました。
お二人ともすごく気さくで優しい方。説明をしているときも、夫婦で仲良く作業をされている様子が想像でき、お二人のやりとりを聞いていると、こちらも幸せな気分になることができました。
この機械を購入する前は手作業で結構大変だったなー。
手作業のときはいろんな人に手伝ってもらってたよね!! そういえば昔、高校生が農家に宿泊して農場見学をするというイベントの受け入れもやってたよね。
そんなこともやってたね。
その頃はキャベツとか作ってて、見学しに来てくれた生徒たちも朝から手伝ってくれてすごく助かったよね。
結構ガタイの良い体育会系の男の子が来てくれて、すごく頑張ってたな。
うんうん。あと、昔はじゃがいもの種いもを植える手作業が結構多くて、機械に一人が付きっきりで確認したり、種いもがちゃんと植えられていないときは手で補充しながら作業してたよね。
人がかかる作業だと多いときで10人くらいは手伝ってもらっていたよね。今は機械のセンサーもすごく優秀になってるから機械のミスもほとんどなくて、人の手がどんどんかからなくなってきてるね。
二人のお話は、機械の進歩とこれまでの思い出が込められていて印象的でした。二人で何年も一緒にやってきた中で、仕事のやり方もどんどん変わってきたのだと思います。二人が作ってきた高橋農場の歴史は次の世代に受け継がれていかれることでしょう。
家族経営でご夫婦が毎日を楽しく過ごしている様子が非常に印象的な見学になりました。
こんな素敵な農家さんからできた作物はすごく愛情に溢れた美味しいものだと思います。高橋農場さんの歴史は今後もより、人々に食と感動を伝えていくことでしょう!!
高橋さん、見学させていただきまして誠にありがとうございました。