働いているから83歳になっても元気な理由 〜ルピナの星代表にインタビュー・前編〜

町の人たちの生活を長きに渡って支えるルピナ。83歳になった星さんは社長に就任して40年になります。働き始めた当初のお話や、今でも現役でいることができる秘訣などをお聞きしました。そこには「町の人を思いやる心」「社員を思いやる心」が詰まっていました。心がほっこり温かくなるお話となっていますので、ぜひご一読ください。

WRITER
西村 奈々子
大阪出身。父が上士幌に移住。大学卒業まで、父が愛した上士幌に来ている大学生。私もこの町を愛したい。好きなことは上士幌の町を自転車で駆け抜けること。
ルピナの辿った歴史

こんにちは!お忙しい中、お時間を作っていただいて本当にありがとうございます!

いえいえ、私にお話しできることならなんなりと聞いてください。

はい!よろしくお願いします!
温かく微笑む社長に出迎えていただきました。

星さんは上士幌町の出身ですか?

いえ、違います。出身は本別町で、上士幌に来たのが昭和29年。18歳のときかな。

何がきっかけで上士幌町に来られたんですか?

前の社長の片原さんが家のそばにいたんですよね。それで、後継者がいないと言われて。じゃあ、まあ働いてみるかっていうことで働きはじめました。来てから苦労したけどね。

来てすぐに働かれたんですね。

そうですね。次の日から、社長の家族のところに住み込みでね。結婚するまでずっと働いてました。やっぱりね、長くなってくると大変でしたよ。石の上にも3年って言うけれど、本当にね、いろいろありました。

当時はどういうお店だったんですか?

大体、30坪くらいの店舗でね。

創業当初は酒の量り売りをされていたと聞きました。

そうです!酒も、醤油も、砂糖も、油も全部量り売りでした。袋詰めの商品が当時なかったですからね。配達も車がなかったので自転車で配達。

自転車ですか!

そうですね。ご用聞きと言って、個人宅に注文を取りに行ってました。市場は帯広ですから、朝5時に上士幌の同業者などと一緒に手配した車で帯広に行って、上士幌に帰ってくるのが10時過ぎ。そこから店頭に並べたり、自転車で配達をしてましたよ。

1日何軒くらい行かれてたんですか?

大体ね、10軒くらいかな。2人で分けて毎日20軒くらい配達していました。自転車に山盛りに荷物乗せて走っていたから大変ですよね、なんせ車がないんだから。

いやあ、本当ですよね。道も悪いし。

そうそう、砂利道だからね。昔は寒いから。

え!冬場も自転車ですか?

うん、冬場も関係なく配達するよ。マイナス30度の中で。

走れるんですか!?

まあ、リヤカーとか使ったりしてなんとかしてたなあ。すごく寒いよ。

想像を絶します。

道が悪くてバランス崩して、酒を壊したりもしました。冬場は今と違って寒かったね。

ご用聞きのお客様はどういった方ですか?

病院とか、普通の家庭の人たちのところにご用聞きに行って、品物を持っていくと喜んでくれました。若い人は買いに来れるけど、年配の方は出歩くのが大変だから助かるんだって。

そうですよね。

そういう時代だったんですね。この写真は今のルピナがあるところですか?

いや、神社の下の大通りにあった。昔は国道で一番メインの通りだったんです。今は町道だけどね。

昔はそこが栄えてたんですね。

そう。そこから今のルピナの場所に移転してきたのが平成11年。そのときに店名もルピナになったんです。

元々は八百屋のような店舗を別の大通りに構えておられてそこがスーパーになり、今の場所に移転したという形ですか?

そうですね。前の店舗は土地が狭いし困っていたときに、ちょうど農協が小売事業をやめるという話になって。そのあとを継いで今の場所でやることになったんですね。
社長になったきっかけ、続ける理由

社長になられたのはいつですか?

代表になったのは昭和56年。43歳のときですね。前の社長が任せてくれてから、いろいろ悩むことはあったんだけど、この店を続けていきたかったからずっとやってきたね。今は息子たちも後を継ぐと言ってくれて。

星さんの息子さんですか?

そうそう。

えー素晴らしい!

息子が2人いるんだけど、一人はルピナの店長を、もう一人は専務としてトカトカのパン屋さんとか肉屋さんの事業をやっています。

じゃあ、社長が就任されたときにはもう息子さんも働いておられたんですか?

店長は1〜2年違うところに行っていて、そこからこっちに来て。専務は高校が終わって半年後に戻ってきたんだよ。

二人の息子さんもここでやるから、お父さんは社長に就任したということですね。

ええ、そうですね。息子に対しては、自分の好きな道を選んでいいんだよって言っても、やるって言ったから。それでずっとやってもらってるって感じですね。

えー、嬉しいことですね。

そうですね。

今年で社長を続けられて40年目になるんですね。

そうなるね。

それだけ長く社長をされていて、続けられる理由ってなんでしょう。

働いているから体が動くのかなあと思っていてね。これで家にいたらボケちゃうから。

現場に出るっていうことはずっとモットーにされておられるんですか?

そうですね。朝5時半に来て、いろいろ下準備しなくちゃならないからね。それが体にいいのかなと思ってるね。

鮮魚コーナーに立たれているのをよくお見かけします。

そうだね。そのほかにも野菜とか、お肉とかも見て、足りないもの足したりしてやらないと、お客様にご不便をかけますからね。

何時まで働いてるんですか?

今は19時ごろまで、大体ね。休みは週に1回から2回でシフトしていますけどね。

朝早くから夜までですね。

でも、それがいいと思うよ。動いているから元気でいられるね。

本当にお元気ですもんね。

おかげさまで。やっぱり年々体が言うこと聞かなくなってくるけどね。もうここで働いて50年になるからさ、そろそろ引退しなくちゃならないかなとも思うけど(笑)。引退しちゃうとボケちゃうよね。動いてるうちはいいよ。

現場に立つ以外にも、心掛けてらっしゃることってありますか?

元気なうちに家内と一緒に旅行をしたいなっていう構想は持ってるんだけど。

素敵〜!

今は休みでも、なんだかんだお客様が来たりしてね。

長いお休みを取られてないんですね。奥様とはどこにも行けてないのですか?

そうですね。月に1回か、実家に行ったりとかするときもあるけどね。いやあ、動いてるうちはいいなあと思って。気分的にも違うかなと思ってる。

うんうん。

あんまり休むと体が、ついてこなくなるよね。

なるほど。息子さんに「休みをとって、お母さんとどこか出かけておいでよ」と言われても体が鈍るからいいかなということですか?

そうそう!本当にそうなんだよね!1日いっぱいゴロゴロしてると、逆に体が疲れてきちゃうんだよね(笑)。

そうなんですね(笑)。

だからやっぱり動いてる方がいいなあって。

休みの日は何をされてるんですか?

休みの日はね、書類をちょっと書くね。

仕事をされているんですか!

仕事というか自分のちょっと書類をまとめるとかしてるね。

それは休みじゃないですね(笑)。

なかなかね(笑)。

そうやってずっとお仕事されている中で、何か楽しみとか喜びはどういうときに感じられるんですか?

そうですね。たまに、ゆっくり休みたいと思っても、さっき言ったようにあんまり休んでも逆に体が鈍るから。

動くのが大切なんですね。

そうですね、以前はパークゴルフもやっていたんだけど、そんなに時間がないからやってなくて。休みと言ったって、半日ゆっくりしただけでそれ以上休むと逆に体が疲れちゃう。

それは昔からそうなんですか。

そうですね。なんせもう、動いてる方がいいもんね。みんなには少し休みなさいなって言われるけど(笑)。

あはは(笑)。

休んだらボケちゃうんだよって言ったら、そうだよねって言われるけど、本当にそうなんだよ。
社長が今日まで元気な理由は「働き続けること」といいます。その根底には、喜んでいる、求めてくれているお客様がいるからということも理由の一つのようです。生きている限り元気でいたいと思う私は、星さんの生き方にとても学ぶことがあるように思いました。
次回、後編は長く働いている方が多いという従業員への接し方などをお聞きしています。一緒に働く方との接し方についても学ぶべきことが多い素敵な考え方をされている星さんのお話。ぜひ後編もご期待ください。