牧場のお仕事について聞いてきました
上士幌町は人口よりも牛の頭数の方が多い町の1つです。
当然のことながら、町内には畜産業のお仕事があります。
今回は牧場での職業体験のために上士幌町へやって来た大学生、岡田紗季さんを取材しました。
PHOTOGRAPHER
土門 史幸
フリーカメラマン。2021年6月から上士幌町で地域おこし協力隊としてまちづくり会社で活動中。苫小牧市出身。写真や動画で地域の魅力を伝えたい。空・水中ドローンも扱えます。
WRITER
渥美 緑(あつみ みどり)
2022年1月より静岡県から上士幌町へ移住。地域おこし協力隊としてまちづくり会社で活動中。上士幌町で出会う人、ものは基本すべて“初めまして”です。その”初めまして”の瞬間を言葉にして発信できたらいいなと思います。
岡田さんは和歌山県出身、現在は神奈川県にお住いの大学4年生です。
今回夏休みのある出会いをきっかけに、上士幌町で乳牛を飼育されている鈴木牧場さんで職業体験をさせていただくことになったそうです。
「私にとって、この夏は学生最後の夏休みなので、大好きな北海道で様々な体験をしたいと思っていました。
元々、札幌や帯広にはよく遊びに来ていたのですが、たまたま札幌のシェアハウスに滞在していた時に出会った友達に”牧場で働く体験してみたいんだよね”と相談したことをきっかけに、上士幌町にご縁がつながって、鈴木牧場さんにお邪魔できることになりました」
インタビューに答えてくれた岡田紗季さん
大学ではヘルスケアや医療分野の勉強をされている岡田さんが今回の体験を望まれたのは、次のような思いからだったそうです。
「私が牛肉を食べるということは、牛の命をもらっているということであって、情報としては理解しているんですが、普段の生活の中で目にするのはスーパーにある綺麗にパックされた赤身の肉でしかなくて。
生き物としての牛と、食べ物としての牛肉がつながっている感覚がなかったんです。
職業として牧場主の方にお会いするような機会もなかったですし」
「だから、知らない世界を見てみたいと思って行動したという感じです」
今回の職業体験では、牛舎の掃除や、搾乳後の消毒など色々なことを体験させていただいたそうです。
「仕事の中で一番大変だったのは牛の糞尿の掃除です。本当に嗅いだことのない匂いでした…(笑)
私たちが商品として見ている牛乳やお肉は、本当はこういう環境の中で誰かが仕事をしていてくださっているからこそ届いているものであって、その大変さというものを身をもって感じました。朝4時や5時に起きるということから全然想像していなくて…」
「それと、牛にもそれぞれ特徴や個性があって、この番号の牛はいつもこうだよなぁ、というようなことに気がついたりして」
確かに、私たちの生活のために畜産という職業が存在し、それに従事する方たちがいらっしゃって、牛をはじめとした生き物の命を頂戴して生きていると実感するのは、スーパーに並んでいる商品を見ているだけでは難しいことです。
岡田さんの中で、この職業体験をとおして、これまで”実感”していなかった情報が自分のものになっている、という印象を受けました。
「実は1日目が終わった後は、私1週間本当にもつんだろうかって思いました(笑)
朝も夜も仕事があるっていうのも知らなくて、思った以上にしんどかったですね。
搾乳に関しては思ったよりも機械化が進んででいたんですけど、糞尿掃除などについても、もっと最先端の技術があるのかな、と思っていました」
牧場主である鈴木さんもお話してくださいました。
「もちろんお金をかければどんどん機械化することもできますし、搾乳も回数を増やせば利益は出ます。でもその分従業員の負担が増え、人を増やすにはまた人件費がかかります。従業員の負担を減らすために機械化しようとすれば、またその分のコストがかかる。
搾乳の時間も何を優先するかで変わってきます。子供と一緒に夕ご飯を食べたければ、夕方の搾乳も早くなるし、夕方の搾乳時間にあわせて朝の搾乳時間も早くなります。
機械化も働く時間も各牧場の考えや環境によるところがあると思います」
「紗季ちゃんは今回の体験の中でアレルギーの症状が出ちゃったりして、大変だったと思います。私自身も夫もアレルギーにかかってますし、彼女にも、ひどくなっちゃうかもしれないから無理しなくていいよって言ったんです。でもちゃんと仕事に出てきてくれて。すごいガッツがあるねって感心してたんですよ」
アレルギー要因としては牧草や牛の毛によるものなど、人それぞれだそうですが、薬を服用して仕事をされている方もいらっしゃるそうです。
肉体労働としての大変さのほかに、さまざまなご苦労があることや、技術が進化しても決してすべての工程が楽になるわけではない、ということがよくわかりました。
さまざまな事を体験する中で気が付くことがあったそう
岡田さんは、牧場でのお仕事のなかで、次のような体験もされたそうです。
「ここの牧場にはベトナム人実習生の方々が来ていらっしゃるんですけど、ベトナム料理を作ってくださったり、お子さんの写真を見せてくださったりしました。ベトナムの方々と交流させていただくのも初めての機会だったので、新鮮でした」
また、上士幌町という町そのものも、とても新鮮に映ったそうです。
「東京だと壁一枚挟んで人が住んでいる状況だけど、ここは見渡す限り大地で隣の家が遠い。というか隣の家がどこにあるか見えないくらいで。
一面全て緑で、都会の人みんなが想像する北海道のお手本のような町だなぁ、と思いました。」
岡田さんは職業体験のかたわら、景色を堪能したり、大好きな乳製品、特にアイスの食べ比べなどを楽しみながら上士幌町での1週間を楽しんで過ごされたそうです。
”身をもって感じた”とおっしゃるとおり、今回の仕事を通して、たくさんのことを吸収された岡田さん。
「今後、牛はもちろん、自然に触れられる機会は絶対少なくなると思うので、今回のご縁をいただけて良かったです」
みんなが想像する北海道のお手本、上士幌町へ、ぜひまた遊びに来ていただきたいと思います。
朝から夜まで1週間お疲れ様でした!
今回は岡田さんのインタビューを通して牧場のお仕事についてご紹介しましたが、上士幌町の求人の割合としては第一次・第二次産業が2割ずつ程度、第三次産業が5割程度となっており、さまざまな仕事があります。
まちづくり会社では、上士幌町役場と提携して無料職業紹介所を運営しています。
上士幌町で働くことを検討されている方やこれまでと全く違う職業についてみたいと考えている方、とりあえず上士幌町で働くことについて話を聞いてみたい方など、どなたでも、まずはどうぞお気軽にご相談ください。