三国峠を自転車で下ると人生のヒントが見えてきた
上士幌町の中でも広大な平野の中心地とは対照的に、町北部の緑の山々に囲まれた山間部にある三国峠。北海道の国道の中で一番標高の高い峠(標高1,139m)であり、日本の国立公園の中で最も広い、歴史ある大雪山国立公園にあります。JICA訓練生として上士幌町にやってきた僕たちは、その三国峠でいきなり驚きのアクティビティを体験することに。さてどうなるのでしょうか!?
WRITER
瀬谷友啓
JICA訓練生。栃木県出身。自然溢れる北の大地で景色を楽しみ、人と話し、美味しいものを食べる。様々な機会に触れて、町の魅力を感じて自分の言葉で伝えることができたらいいなと思っています。
三国峠に出発
眠い。太陽が昇りきっていない。それもそのはず、この日の出時時刻は早朝5時31分。普段ならまだ布団の中で夢を見ています。眠気が覚めきらず頭がボーとしているため、窓越しに流れて行く風景が理解できないまま車に揺られていました。
しかし、出発をしてから、数十分。窓越しのその先に見える景色は「壮大」の一言に尽きる絶景だったのです!
コンビニにもなく、民家もなく、信号も見当たりません。
北海道と聞けば、多くの方が大自然を思い浮かべると思います。そのどれにも及ばない圧倒的な光景とあまりのスケールの大きさに、それを現実として受け止め、頭で理解することが難しいほどでした。
糠平のホテルから車を走らせること30分、自転車で下り始めるスタート地点「三国峠展望台」に到着しました。ここから見える景色は絶景で、山々の間に雲がかかっている光景を見ることができました。
展望台には「ヒグマ出没に注意」の看板もありました。熊の住む場所にいて、自分が自然の中にいるのだなと改めて感じます。
そして、軽トラックから自転車を降ろし、準備完了です。来た道を自転車で下ると考えると少し興奮すら覚えてきました。
ハンドルを握ると
自転車に乗り、坂を下り始めます。どんどんスピードが上がっていき、スピードを出してより風を切って行きたいという気持ちと、ゆっくりと景色を楽しみたい気持ち。それとほんのちょっとの恐怖心が入り混じり、ブレーキをかけるか迷いながら乗っていました。
「まるで僕の人生みたいだな」
目の前に流れていく景色を見て進みながら、そんなことを考えました。
とにかく前に進むしかないし、リスクを犯してでも全速力で駆け抜ける。自転車の場合は、事故や橋から落ちて命の危険がありますが、自分のチャレンジしたいことは命の危険まであることはほとんどない。その時はとにかく心が高鳴る方に全速力で漕いで行けばいい。そんなことを思いながらハンドルを握っていました。
景色も雄大で、三国峠展望台から下るとすぐに松見大橋があります。
その道はまるでマリオカートに登場するレインボーロードのようで、道の端っこに行くと落ちてしまいそうになるアドベンチャー感のある道でした。
下り終えて
絶景を横目にただ自転車で風を切ると、ようやく自分がこの自然の中にいることが実感できました。
ホテルを出たときは、東京と変わらないくらいの暑さでしたが、峠に着くと霧がでてきて、季節が逆戻りしたような肌寒さを感じて、まるで違う世界に来たような感覚になりました。
風の心地よさに全身を委ねてみると、何もかもがきれいに洗い流されたような気持ちになり、ぼんやりと心にかかっていたモヤモヤが晴れ、これから先の未来に少しばかり勇気と期待が湧いたような気がしました。
下っている時間はあっという間に過ぎ去っていきましたが、この一瞬を一生忘れることはない。それくらい新しい感覚に出会うことができました。
眠い目をこすりながら朝5時から始まった今日という1日。まっすぐな風を受けるたびに、三国峠を下ったときに感じたスッキリとした気持ちを思い出すような気がします。三国峠はそんな不思議な出来事が起こる場所でした。