「優しさの拠点」となる助産院をつくりたい~渡辺 雅美さん~
「地域に溶け込んだ『町の助産師さん』を目指したい」。そんな思いで助産院の開業を決意した渡辺雅美さんは、2020年度「かみしほろ起業塾」を受講し、最優秀賞を獲得しました。2021年度の開業に向けて準備を進めている渡辺さんの胸にある思いとは――。(制作:ホロロジー編集部)
追記:2021年10月に開院されました。記事の最後に開院された記事のリンクがあるのでぜひそちらもご覧ください。
助産師
渡辺 雅美さん
|わたなべ・まさみ|1980年生まれ、岡山県出身。本州の病院で看護師・助産師として勤務。2020年に上士幌町へ移住。子育て世代の移住が増えている上士幌町で、周囲に家族や頼れる人がいない状況で子育てをしているママたちを見て、ママが孤立しない環境づくりの必要性を強く感じ、助産院の開業を決意。ママたちが安心して子育てができるよう、妊娠、出産、育児までをトータルで支援する助産師を目指している。
2020年に岡山県から上士幌町に移住してきた渡辺雅美さんは、町に助産院を開業したいとの思いから2020年度「かみしほろ起業塾」を受講しました。
渡辺さんは、総合病院で15年間助産師として勤務。その間に1,000件以上の出産に立ち会ってきました。また、妊婦さんや産後のママの育児相談などにも応じ、3,000人以上の声に耳を傾けてきました。
移住後、渡辺さんは健康増進センターに勤務するとともに、まちづくり会社が主催する「ママのHOTステーション」に助産師として参加。町の産前産後のママたちに接してきました。そのなかで「上士幌町には助産院が必要」と思うようになったといいます。
ママたちが安心できる環境を整えたい
「上士幌町は子育て世代の移住者が多いと聞いていましたが、実際にそうですね。話を聞くと、周りに家族や頼れる人がいない状況で子育てをしているママたちも多く、孤独を感じたことがあるという声を多く聞きました。そんなママたちの孤立を防いで、妊娠期から産後に至るまでママたちが安心できる環境を整えたい、そのサポートをするための助産院をつくりたいと思いました」と渡辺さん。
現在、十勝管内で産前産後ママの身体面や精神面をサポートする助産院は、帯広市、音更町、芽室町にあります。ですが、いずれの助産院に通うとしても上士幌町からは片道約1時間の距離。
「妊娠中にお腹の張りを感じたときに、病院に行くべきか迷ってしまった」
「産院が遠いので、受診をためらってしまう」
「産後、乳腺炎になってしまい体調が悪い中で赤ちゃんを連れて病院に行くのがつらかった」
上士幌町で出産育児を経験したママたちから聞いたそんな声も、渡辺さんの背中を後押ししました。
町に自然と溶け込む助産院を目指したい
「ママたちの声を聞いたこともありますが、この町の雰囲気も開業を決意した理由の一つです。上士幌町は穏やかで優しい人が多く、自分にできないことがあっても、周りにはそれを手伝ってくれる人がいる。競争するのではなく、お互いが支え合いながら活かし合っていく風土があると思う。そんな町だから開業したいと思えたんです」
渡辺さんは「かみしほろ起業塾」を受講しながら、町内でのサービスだけでなく、オンラインを活用した相談会や動画教材の販売など、地域に制限されないサービスを組み立てていきます。結果、2020年度の最優秀賞を獲得しました.
渡辺さんが目指す助産院は「家族がかかりつけの助産院であること。夫婦のパートナーシップが育める場所であること。ママの心も体も休まる場所であること。優しさが循環する拠点となること」。
そして何よりも「幸せな家族を増やすこと」。
そんな志をもつ渡辺さんですが、気負うことなく2021年度の開業に向けて準備を進めています。
「『私がやらなきゃ!』とか『やるぞ!』といった使命感からではなく、この町のママたちと接していて、自然と開業しようという気持ちになったんですよね。なので、これから開業する助産院も、町に自然に馴染むような、そんな場所にしたいと思っています」
妊娠から出産、育児までをトータルで支援する助産師は、町に住むママたちにとってとても心強い存在となるに違いありません。地域に溶け込んだ「町の助産師さん」として活動していく。それが渡辺さんの願いです。