お互いを支え合う共助の仕組み―「かみしほろ人材センター」
会員と仕事をマッチング
「かみしほろ人材センター」は、日常のちょっとした困りごとや仕事をお願いしたいという人と、空き時間を使って仕事をしたいという人(人材センター会員)をつなげる役割を担っており、(株)生涯活躍のまちかみしほろが運営しています。
2018年5月に設立して以来、年々仕事の相談や依頼が増え続け、2020年度は300件を超える依頼を受けるまでになりました。
仕事をしたい人は人材センターに会員登録をしておけば、自分の得意なことややりたいことに合わせて人材センターから仕事が提供されます(※)。2021年1月末時点で、高校生から80歳を超える方まで80名以上が会員として登録しており、それぞれが得意なことを活かして仕事を行っています。会費や登録料はかかりません。
※会員と仕事の依頼者あるいは人材センターの間には雇用関係はありません。そのため会員登録をしてもすぐに就業できる保障はありません。詳しくは、かみしほろ人材センターにお問い合わせください。
地域の「困りごと」や「課題」を人材センターで解決
これまでに請け負った仕事は、個人の依頼では掃除や料理代行、草刈り、庭木の剪定、自宅の不用品処分、荷物運びの手伝い、英会話レッスン、パソコンやスマートフォンを教えてほしいなど。なかでも掃除や草刈りなど、日常生活にかかわる仕事は、特に高齢者の方からの依頼が増えています。
「今までは自分でやっていたが、年齢を重ねるにつれて難しくなってきた」
「これまでは頼める人がいたけれど、いなくなってしまい困っている」
そんな高齢者の「困りごと」の解決も、人材センターが担う役割の一つです。
また事業所からはイベントスタッフ、チラシデザイン、チラシポスティング、事務補助、施設清掃といった依頼をいただいています。農家からも農作物の収穫手伝いや、収穫した野菜の選果作業などの依頼相談が増えています。
こうした事業所や農家が抱えているのは「労働者不足」という課題です。「今までお願いしていた人ができなくなった」「仕事はあるがスタッフの手が回らない」「人手が足りない」。そのような声にも人材センターは応えています。
「ちょっとした町民の困りごとは、町民同士で解決できるようにする」
「かみしほろ人材センター」が目指すのは、お互いを助け合い支え合う「共助の仕組み」づくりです。「困りごと」や「課題」を、持続的に解決していくための仕組みとして地域に根付かせていくことを目指しています。
好きなことを誰かの喜びに―「ハレタかみしほろ企画・運営」
2019年8月に起業家支援センターとしてオープンした「ハレタかみしほろ」は、町民が自分の「好きなこと」や「得意なこと」を活かしてイベントを開催したり、店舗出店にチャレンジできる施設です。
(株)生涯活躍のまちかみしほろでは、そんな町民のチャレンジをサポートするとともに、趣味や特技を持つ町の人たちといっしょに、さまざまなイベントを企画運営しています。
「ハレタかみしほろ」で行っているチャレンジサポートは、主に次の二つです。
町のコミュニティづくりを支援
一つ目は、「ハレタかみしほろ」が企画・開催するイベントに参加する方たちへのサポートです。
例えば、2020年7月から始まった「手づくりおやつカフェ」は、お母さんをはじめとする町の皆さんが作った手づくりのお菓子を販売するイベントです。普段は家族や友人のために作っていたお菓子を町の人たちに提供することで、個人の楽しみを周囲に広げていきます。
また、イベントを通じて作り手と町の人たちがつながり、それがコミュニティとして育っていくことを期待しています。
実際に手づくりおやつカフェに出店した作り手の皆さんからは、
「出店後、町で会った人から『ケーキが美味しかった』と声をかけられて嬉しかった」
「食べる人の喜ぶ顔を思い浮かべながら作ることがとても楽しい」
といった感想が寄せられています。
町民の「やってみたい」を、短期~中期的に支援
二つ目は「店舗出店にチャレンジしてみたい」という方たちへの支援です。「ハレタかみしほろ」のカフェスペースを活用して、月に1回程度の単発的な出店から3カ月間以上の定期的な出店までを、企画や告知、運営面でサポートします。
2020年7月からはランチを提供する「カフェやどかり」がオープンし、町民の新たなくつろぎのお店となりました。そのほかにも、和食ランチや移動書店、抹茶カフェ、写真展、ミニ縁日、夜のバーなど、町の人たちの「やってみたい」が少しずつかたちになっています。
このチャレンジを通して、出店者が町の皆さんとつながる楽しさや喜びを感じてもらい、将来的にはここから新しい事業の芽が育っていくことを願っています。
町民同士の交流が次のチャレンジに
出店者たちがこの場所で「好きなこと」を表現する。そしてその好きなことが、誰かの喜びにつながっていく。町の人たちが楽しく集い、交流することで新しい可能性が生まれていく。
「ハレタかみしほろ」は、挑戦する人と集う人たちが交流し、次のチャレンジにつながる空間となることを目指しています。
そしてここでチャレンジする人たちが、自分の新しい可能性を見つけていける場所として、一緒に育てていきたいと考えています。
「ハレタかみしほろで何かチャレンジしてみたい」という人は、(株)生涯活躍のまちかみしほろへお問い合わせください。
求職者と求人企業をつなぐ―「無料職業紹介所」
(株)生涯活躍のまちかみしほろは、上士幌町と業務提携をして「株式会社生涯活躍のまちかみしほろ無料職業紹介所(以下、無料職業紹介所)」を開設し、運営しています。
無料職業紹介所は「ハレタかみしほろ」内にあり、求人票の閲覧や担当者による求職相談ができます。
町民の皆さまだけでなく、全国の皆さまが上士幌町で就業や移住に向けての最初の一歩を踏み出せるように、企業と求職者の間に入り、求人の相談や斡旋を行っています。
直接相談に来られない方に対しては、上士幌町無料職業紹介サイト「かみしほろ会社・仕事図鑑WEB」で求人情報を公開しています。企業の採用情報だけでなく、企業トップや採用担当者のメッセージ、働く人たちの思いなどを掲載し、上士幌町の企業の魅力を紹介しています。
【かみしほろ会社・仕事図鑑WEBサイト】
https://kamishihoroshigoto.com/
※スマートフォンの方は、下記の2次元バーコードからもアクセスできます。
「かみしほろ会社・仕事図鑑WEB」からは、求人応募や相談も可能です。近年は町民の利用だけでなく、WEBサイトを経由して移住を検討している方からの相談も増えています。遠方の方の場合はメールや電話などでの相談に応じており、そこから就業につながったケースもあります。
無料職業紹介所は、町内企業と求職者のより良いマッチングを実現するために情報の提供やサービスの充実に努めています。
求職の相談を希望される方は、無料職業紹介所までお気軽にお問い合わせください。また、求人情報を掲載したい企業様も、合わせてお問い合わせください。
一人ひとりの思いをかたちに―「かみしほろ起業塾」
「かみしほろ起業塾」は、起業・第二創業・新規事業展開の促進と支援を目的に、2018年度から進めている事業です。一人ひとりのやりたいことの実現を通して、地域経済の活性化にもつなげていきます。
初年度は、起業を学ぶためのセミナーや視察、ワークショップを中心に実施しました。2019年度からは「こんなことをやってみたい」というアイデアを持つ方から、起業や新規事業を検討している方までを対象に、実際に事業計画書を作成し、最初の一歩を支援するためのプログラムへと進展させています。
やりたいことを事業計画書で表現する
プログラムでは、専任の講師が一貫して指導やサポートを務めます。参加者は経営の基本や事業計画の必要性について学びながら事業計画書づくりを進め、プログラムの最後では自身が作成した事業計画書を発表します。さらに、受講生に対しては事業着手金の支援制度も設けられています。
2019年度には7名、2020年度は3名が受講し、19年度受講生の一人は実際に上士幌町内での起業を果たしました。
「起業塾に参加したことで、私の中にあった漠然とした思いが徐々に具体的なかたちになっていきました。事業計画をつくるのは大変でしたが、自分と真摯に向き合うことで、自分が本当にやりたいことや大事にしたいことが見えてきた。それを町の皆さんに伝えていったら、たくさんの人が応援してくれて、いつの間にか本当に起業していました」
「かみしほろ起業塾」を経て起業した最初の一人である、齊藤肇さんの言葉です。
一人ひとりの「思いの種」を大切にしたい
「こんな小さな町で起業なんてできるの?」
「もし起業しても、生活していくことは難しいんじゃないか?」
そんなことを思う人も多いかもしれません。でも私たちは、小さな町だからこそ、新しいものを生み出しやすい環境が整っていると考えます。小さな町だからこそ、できるチャレンジがあり、さまざまな人たちがそのチャレンジを応援してくれます。
「挑戦したいことやアイデアがある」
「これまで町になかったものをつくりたい」
「町の事業を継承して、地域のために貢献したい」
そんな一人ひとりの「思いの種」を大切にし、プログラムを通じて育て、実現に向けてかたちにしていく。これが「かみしほろ起業塾」が果たす大きな役割だと思っています。
【上士幌町】健康づくりのきっかけに―「健康ポイント事業」
「健康ポイント事業」は、日々の歩いた歩数を記録したり、町内で開催される対象イベントに参加することで「健康ポイント」が付与され、そのポイントが上士幌町内で使える商品券と交換できる取り組みです。
上士幌町では2018年度からこの事業がスタートしました。(株)生涯活躍のまちかみしほろは、町からの委託を受けて、事業参加の申し込み受付やポイント交換手続きなどの事務運営を行っています。
上士幌町内にお住まいで18歳以上(高校生は除きます)の方であれば、事業に参加することができます。2020年12月末時点で10代から90代の方まで、700名以上が事業に参加しています。
事業が目指すのは「健康への関心を高めていく」こと、そして「楽しみながら継続的に健康づくりに取り組む」ことです。事業に参加することで、参加者一人ひとりが、自分の体や健康について意識を向けるきっかけになることを願っています。
健康ポイント事業では、イベントも開催しています。イベントを取り上げた記事もあるので、ぜひご覧ください。
どのようなことをしている事業なのか
事業への参加を希望する方には、活動量計を貸し出します。活動量計は、毎日の歩いた歩数やカロリー消費量を見ることができます。購入を希望される場合には斡旋も行っています。
また町内の4施設(生涯学習センターわっか、スポーツセンター、ふれあいプラザ、ハレタかみしほろ)に設置している体組成計と血圧計を利用することで、自分の体を測定でき、健康管理に役立てることができます。また活動量計の歩数も記録できます。
日々の歩数を記録したり、体組成計や血圧計で測定をすると、「健康ポイント」が付与されます。このポイントは年間を通して一人10,000ポイントまで貯めることができ、年度末に上士幌町内で使える商品券と交換ができます。「健康ポイント」は、上士幌町が行う健康イベントや、健康診断を受診することでも貯めることができます。
測定結果や貯まったポイントは「からだカルテ」で確認
歩いた歩数や、体重、体脂肪、血圧などの測定結果、今貯まっている健康ポイント数などは「からだカルテ」というWEBサイトで見ることができます。
「からだカルテ」は、パソコンやタブレット、スマートフォンなどで見ることができ、自分の体の状態が確認できたり、健康づくりに役立つコラムを読むこともできます。
「健康を意識するようになった」参加者の声
「健康ポイント事業」に参加している方たちからは、これまでにさまざまな声が寄せられています。
「活動量計を持ったことで毎日歩くことが楽しみになりました。歩くことを続けていたら体脂肪が減って、高かった血圧も正常になりました」
「健康を意識するようになり、運動だけでなく食事にも気をつかうようになりました」
「友人もみんな参加しているので、一緒に楽しんでいます」
「歩いた分だけポイントが付与されるので、どれだけポイントが貯まったかを見ることも楽しみです」
このように、皆さんそれぞれに楽しみ方を見つけて参加しています。
まずは「きっかけ」にしてほしい
「普段、自分はどれくらい歩いているのだろう?」
そんなことを思ったことはないでしょうか。
まずは活動量計を持って、自分がどれくらい歩いているかを知ってみる。次に1日20分以上歩くなど、目標を決めて取り組んでみる。
いきなり走ったりスポーツを始めるのは大変かもしれませんが、歩くのはちょっと意識をすればすぐにできることです。そんな風にして町の方たちには、健康に意識を向けるきっかけにしてほしいと思います。
事業への参加を希望される方は、(株)生涯活躍のまちかみしほろ(ハレタかみしほろ内)にお問い合わせください。
お問合せ先
生涯活躍のまちかみしほろ(ハレタかみしほろ内)
連絡先 01564-7-7630
メール info@kamishihoro-town.com
LINE https://lin.ee/NFlKbt0
担当 小川
さまざまな業種で活かせる資格取得を―「介護職員初任者研修」
介護資格を取得するための研修事業
(株)生涯活躍のまちかみしほろは、町内における介護人材の確保や町内介護事業所に就労している職員のスキルアップなどの目的で「介護職員初任者研修」事業を行っています。
「介護職員初任者研修」は、数ある介護資格のなかでも入門資格といわれています。介護の基礎知識や技術だけでなく、介護の理念やコミュニケーション技術、人間のからだの仕組み、老化や認知症の理解なども含めて総合的に学んでいきます。
学歴や実務経験など、受講に係る条件はなく、高校生以上であれば規程のカリキュラムを修了することで誰でも資格を取ることができます。上士幌町民、上士幌高校生、町内介護事業所にお勤めの方は無料で受講することができます。
講習を受けた方のインタビュー記事もあるので併せてお読みください。
この事業は、上士幌町からの委託事業として2017年度にスタートし、2020年度までにのべ41名が資格を取得しています。例年、秋~冬にかけての約3カ月間(※)にわたって開催し、高校生から70歳代の方まで幅広い年代の方が学んできました。
すでに介護職に就いている方や、これから介護事業所で働きたいと考えている方だけでなく、この資格を家族の介護に活かしたいという方や、サービス業など他業種で働いている方などにも受講いただいています。
「学ぶことで介護のイメージが変わる」
これまでに受講した方たちからは、
「すぐに実践できる知識や技術を学べて大変有意義でした」
「介護福祉へのイメージと理解が変わりました」
「介護の資格と思っていたが、学んでみると幅広い分野で活かせる資格だと思いました」
「これから家族の介護が必要になるので、その前に学ぶことができて良かったです」
といった声が寄せられ、また町内介護事業所からも
「職員の育成につながって良かった」
という声をいただいています。
また、受講をきっかけに介護福祉分野への興味が高まったという声もあり、町内介護事業所への就業につながることも期待されています。
高齢化が加速する日本は、2025年には約245万人もの介護人材が不足するといわれており、上士幌町でも介護福祉事業所の就労人材の確保は大きな課題です。本事業は、こうした課題の解決や、町民の「介護を学びたい」というニーズにこれからも応えていきます。
なお、研修の受講募集は、8月ころにチラシやホームページなどで告知を開始しています。
※令和2年度は新型コロナウィルス感染拡大防止に係る臨時的な取り扱いとして、通常15日間程度の講義を、自宅学習を中心としたカリキュラムとし、講義は3日間にとどめて実施しました。
やりたいことをやらないと意味がない!〜地域おこし協力隊 森典子さん〜
上士幌町の子どもたちには「図書室の先生」としておなじみの、森典子さん。読書コーディネーターとして、小学校・中学校・高校の図書室を巡回しています。とにかく明るくて、フレンドリーな森さんが、今、上士幌町で読書コーディネーターをしているのは、あるとき、「やりたいことをやらないと意味がない!」と気づいたことがきっかけでした。
WRITER
苅谷 美紅 (かりや みく)
北海道千歳市出身。テレビ番組ADをしていた東京生活から、青年海外協力隊としてブラジルへ。コロナ帰国後、MY MICHI2期生を経て、取材メンバーとして活動しています。マイブームは朝起きて熱気球を探すこと。
地域おこし協力隊 社会教育推進員 読書コーディネーター
森 典子さん (もり のりこ)
新潟県新潟市出身。生まれて間もなく親の仕事の関係で幼少期を帯広市で過ごす。その後新潟に戻るも、大学で再び北海道へ。卒業後は新潟で仕事をしていたが、2019年5月に読書コーディネーターとして上士幌町へ赴任。3度目の北海道生活となる。大学では美術を専攻し、絵を描くことが好き。
「読書コーディネーター」ってどんな仕事?
今回は上士幌町で地域おこし協力隊として活動している方に、お仕事の内容などを伺います。早速ですが、読書コーディネーターってどんなお仕事ですか?
環境整備といって、小中学校と上士幌高校の図書室で本のラベリングをしたり、書籍の購入や受け入れもしています。コロナが拡大する以前は児童の保護者や地域の方たちに声をかけ、小学校で絵本の読み聞かせやブックトークをしていただいていました。
お絵かき教室みたいなこともしていませんでしたか?
読書の取り組みとは別に行っているアートクラブですね。生涯学習センターわっかで、毎週金曜日の16時から活動しています。これはそのクラブに参加してくれた小学生がつくったキーホルダーです。
かわいいですね。
今年度は図書館事業として、秋の読書週間に本の紹介をするポップをつくるコンテストも行いました。小学校部門と中学校部門に分けて開催して、小学校から19作品、中学校から6作品が集まりました。教育委員会と図書館の職員で審査をして、優秀作品を全国ポップコンテストに出しています。
どうしてポップコンテストを行ったのですか?
子どもたちと接していて、文化系の子たちが活躍する機会が少ないと感じたんですよね。スポーツをしている子は目立つけれど、本が好きだったり絵を描くことが好きな子はどちらかといえば控えめだったりするので、その子たちが周りからすごいと思われたり、得意なことを発揮できる場をつくりたかった。また普段本を読まない子が「ポップをつくりたいから本を読んでみよう」と思ってくれるといいな、という思いもありました。ほかには、上士幌高校のライフデザインの授業でポップづくりに関わらせてもらいました。
※詳しくは 上士幌高校の商品開発授業に密着(5)〜商品を手にとってもらえるポップを作ろう へ
読書コーディネーターになるまで
読書コーディネーターって、ほかの地域にもある仕事なんですか?
ないですね。すごくレアです。
上士幌町に来たのはこの仕事があったから?
はい、読書コーディネーターをしたくて来ました。本や読書に関わる仕事がしたかったんですよね。
上士幌町に来る前は何を?
出身の新潟市で、市が主催している芸術祭の事務局で仕事をしていました。その前に短期留学で1カ月間イギリスに滞在していたんです。そのイギリスでの経験が私にとっての転機でした。イギリスでは美術館に行ったり語学学校に通っていたんですけど、そこで生活しているうちに「やりたいことをやらないと意味がない!」って思ったんです。
何事も「できないと決めつけていたのは自分自身だった」と気づいたんですよね。それまではきちんとした職に就いて安定しないと駄目だと思っていましたが、イギリスから日本に帰っても仕事があるわけじゃない状況で、今後どうしたいかを真剣に考えるきっかけになった。日本から離れたことで逆に考える余裕ができたのかもしれません。
それで、芸術祭の仕事に就いたのですね。
美術の仕事も興味は持っていたけれど、自分で勝手に諦めていた。そんなときに求人が出ていて。大学で学芸員の資格を取っていたので活かしたいと思ったんです。ただその仕事は期限付きだったので、そのあとでどうしようかと考えていたときに、この仕事を見つけたんです。
実際、読書コーディネーターをやってみてどうですか?
子どもたちの本当のリアクションが分かりますね。「なんでその本が好きなの?」って聞くと「これはね〜」って教えてくれる。どんな本が好きなのか、どの作家さんが人気があるのか、子どもたちのリアルが見えて勉強になります。
森さんから見た上士幌町
上士幌町に来たときの印象を覚えていますか?
花を育てている家が多いと思いました。5月に来たのでちょうど桜も咲いていて。ウェルカムフラワーだと思って歓迎されている気持ちになりました。それと土の色が濃い。一度教育委員会の方に畑を案内していただいたことがあって、「これが小豆、これがデントコーン」などと教えてもらいました。自分が生活している土地の郷土や歴史を知ることも大切だと思いましたね。
上士幌町に来て間もなく2年になりますが、今の印象はどうですか?
人と人の距離は近いと思います。上司や同僚からよく「ご飯を食べにおいで」と誘われますけど、きっと地元の新潟市ではこんな関わり方はできないだろうなって思います。野菜もたくさんいただきますし、お裾分けの文化がありますよね。
上士幌にいるからこそ、絵本をつくりたい
これからやってみたいことはありますか?
絵本をつくりたいです。教育委員会の皆さんをはじめ、仕事やプライベートでたくさんの人たちとつながった。そんな人とのつながりを絵本にしたいんです。実は少しずつつくりはじめていて、まずは教育委員会の皆さんをモデルにイラストを描いたりしています。
絵本を職にしたいと思いますか?
いつかは職にしたいです。実はこの10年間、ずっと絵本をつくると決めては何度も挫折していたんです。でも「できない」「無理」と諦めて決めつけていたのは、ほかの誰でもない自分自身でした。それで上士幌に来て「今度こそ、絶対につくる!」と決めたから、どうしてもかたちにしたくて。この土地に来て出会えた人たちがいるから、上士幌にいるからこそつくれる絵本があると思っていて。今、出版社のコンクールに応募するために日々頑張っています!
たくさん本を読んで、大切な言葉に出会ってほしい
「人生を変えた一冊は?」と聞かれたら何と答えますか?
『ハリー・ポッター』シリーズですね。イギリスに行ったのもハリー・ポッターの影響です。小学生のころから大好きで、第一作の『賢者の石』からずっと読んでいます。物語の主役の子にファンレターを書いたこともあります(笑)。すごく厚い本だけど、面白くてすぐに読める。私でも読めるんだって、自信につながった一冊でもあります。
もう一冊挙げるなら『世界でいちばん貧しい大統領からきみへ』。私にとってすごく大切なことが書かれている本です。本には生きる上でのヒントや支えになる言葉がたくさん詰まっているから、本当に子どもたちには本を読んでほしい。そこに書かれている一文にすごく勇気をもらえることもあるから、たくさん本を読んで、自分にとって大切な言葉に出会ってほしいと思います。
最後の質問です。上士幌での生活は楽しいですか?
楽しい! すごく楽しいです。一緒に仕事をしている方たちも面白いし、子どもたちと接していると発見も多い。子どもたちを見ていると、大人になって忘れてしまっていた反応や感情が見えるから、本当に勉強になります!
「できないと決めつけていたのは自分自身だった」「やりたいことをやらないと意味がない!」その言葉が印象的だった森さん。仕事や絵本についての熱い思いを感じました。
また、読書コーディネーターとして関わる上士幌町の子どもたちに、「生きる上で支えになる、勇気をもらえる一文を見つけてほしい」という森さんの思いが伝わることを願っています。
森さん、ありがとうございました!
かみしほろ人材センターで酪農にチャレンジ!(後編)~ミルクやり・お産立ち合い編~
皆さん、前編は読んでいただけましたか?(記事はこちら)
「酪農チャレンジ」の前編では、外の牛たちへの餌やりと生まれたての仔牛の小屋のお掃除の様子をお伝えしました。外では勢いのある母牛たちの前で汗をかき、牛舎では生まれたての仔牛に癒され、そしてここからはいよいよ後編です。
後編ではまず成牛の牛舎のお掃除、そして仔牛のミルクやりをしていきます。それに加え、今回はなんと幸運にも牛のお産シーンに立ち会わせていただくことができました。
WRITER
中山 舞子
1992年生まれ。千葉県在住。青年海外協力隊としてインドに派遣予定。海外派遣の目途がたたない現在、上士幌町に5ヶ月間滞在中。外からの目線で上士幌の魅力を掘り下げて行きます!
まずは牛舎の掃除から!
まずは牛舎の掃除からやっていくよ! 今日は発情期の牛が多いから気を付けてね!
モウくん! 後編もよろしくね!(また喋ってるよ・・・)
荒井牧場さんは、フリーストール牛舎といって、牛たちは牛舎の中で自由に歩き回ることができます。そんな牛たちに囲まれながら作業を進めていきます。
牛の発情期は、19~23日の間隔で周期的に来ます。
基本的に牛は穏やかで危害を加えることはほとんどありませんが、発情期だと普段より積極的に接触してくることがあるとのこと。ちょっとドキドキしますが、頑張っていきましょう!
寝床と水飲み場に溜まっている糞をこの雪かきシャベルで落としてきます。それにしても成牛は近くで見ると本当に大きい!
水飲み場は自動掃除機が入らないので糞が溜まってしまいます。牛が滑らないように、綺麗に糞を掃除します。
牛たちが通路に立ち往生しており、なかなか通れません!
「ちょっとごめんねー!」と近寄っていくも、全く避ける気配なし!
手で押しながら狭い隙間を掻き分けて通ります。
何をしていてもジロジロと見つめてくる興味津々な牛たち。中にはペロペロと腕を舐めてきたりクンクン匂いをかいでくる子も。やっぱり発情期の影響か、いつもより積極的な牛が多い気がします。
元気な牛たちに少々怖気づきながらも、無事お掃除終了!これまた良い汗をかきました!
ミルクやり
ミルクやりの時間だよ~!
まだまだ慣れない牧場仕事、16時のミルクやりの時間を少しオーバーしてしまいました。あわてて仔牛の部屋に戻ります。いよいよお待ちかねのミルクやり。
仔牛は非常に繊細なので外から菌やウィルスを極力持ち込まないよう、まずは長靴をしっかり洗います。
仔牛にあげるミルクは荒井さんが作ってくれます。
仔牛はかなり繊細な生き物。絶妙な温度加減や、体調に合わせた配合が必要です。そのため荒井さん以外の人が作ったミルクだと、牛はいつもとの違いに抵抗を示すこともあるのだとか。
ミルクの容器はバケツに牛の乳頭をかたどった飲み口がついているもの。
洗浄は人間の赤ちゃん用の消毒液を使っているそうで、繊細な仔牛のためにかなり気をつかっているのが伺えます。
生まれて1〜2日間は実際に母牛から絞った生乳を与えるんだよ。初乳はとても栄養価が高いと言われていて、仔牛が健康に育つのに重要なんだ。
仔牛は本当に手がかかるし、難しい。でもやっぱり健康に育ってほしいし、そのために今でも毎日が試行錯誤の日々だよ。それでも弱いから手を尽くしても死んじゃうことはある。でもやっぱり何かあると今でもショックだけどね。
では、いよいよミルクをあげていきます。
生まれたての仔牛はなかなか自分で飲み口を見つけることができません。そのため小屋に入り、指で飲み口へと誘導してあげます。
仔牛によって飲むスピードや飲み方の上手さもそれぞれ。それでもみんなとにかく美味しそうにゴクゴク飲んでくれます。
1回であげるのはバケツに3分の1くらいの量。仔牛によって差がありますが、飲みきるまで平均して3〜4分程度かかります。この、仔牛にミルクをあげている時間がなんとも至福。
可愛いくて、癒されます。そんな一生懸命な仔牛に見とれながらミルクやりをしていると、「まいちゃん! こっち!」と、荒井さんに呼ばれました。
急いで駆け付けると、来たときに産気づいていた母牛の様子が変。よく見ると、仔牛の足が出てきています。もう出産間近です!
ご主人の力也さんが仔牛の足にロープをつけていきます。
荒井さんの「ほら、みんなロープを持って!」という掛け声で咄嗟にロープを掴みます。「え、私なんかがいいの?」そんなことを考えている暇はありません。
母牛が力むタイミングにあわせて大人4人で引っ張ります。
あとちょっと・・・!!
トゥルんっ!!!!
とうとう赤ちゃんが飛び出してきました!!
牛の赤ちゃんが本当にそのままお腹から飛び出してきた光景に衝撃を受け、立ち尽くす私・・・。生まれたての赤ちゃんは元気そう。しっかり息をしています。
何より驚いたのは母牛。これだけ大きな赤ちゃんを産むのに、声ひとつ上げずジッと静かに出産するんです。そして生み落とした瞬間すぐに立ち上がって赤ちゃんに駆け寄ります。
同じ牛舎にいるほかの母牛たちも寄ってきます。
みんなで赤ちゃんをペロペロと舐め続けます。
ほかの妊娠中の母牛も母性本能のためか、まるでわが子のように親牛以上に我先にと舐めまわしている様子が印象的です。
これはリッキングと呼ばれる母牛の習性なんだ。理由は所説あって、敵から赤子を守るためのにおい消しや、仔牛をリラックスさせるためのマッサージなどとも言われているよ。
一生懸命立ち上がろうと必死に息をする仔牛、そして仔牛を応援するかのように休むことなく強く体を舐めまわす母牛。生きようとするその仔牛のパワーと母の強さに圧倒されます。生命誕生の瞬間に遭遇するのはもちろん生まれて初めて。目の前で繰り広げられる神秘的な光景が現実のものとは思えずただただ立ち尽くし、気付いたら涙が溢れて止まらなくなっていました。
今日生まれた仔牛は「JP14743 1801 1」 。1週間遅れで生まれたため、通常より大きめのメスです。牝牛は、荒井牧場で約半年間育成されたあと、ナイタイ高原へ送られ種付けをします。妊娠したらまたここに戻って出産、その後はミルクを作ってもらいます。牧場で生まれる牛に名前はありません。
それでもこの光景を見たあとだと、「どんな命でも生命の誕生は奇跡であり、命は平等に尊いんだな」と、そんなありふれた言葉が突然説得力をもってグッと心に響いてきます。
仔牛は寒さに弱いため、冬場は生まれたあと少しの間、保育器に入れるそうです。母牛たちから泣く泣く離し、保育器に連れていきます。
「連れて行かないで」と必死にアピールする母牛。母牛とはもうここでお別れ。生まれてから一緒にいられるの時間は1時間もありません。かわいそうですが、牛は経済動物。人間の手で守らなければなりません。
温かい保育器に入れたら仔牛ともお別れ。
色んなドラマがありましたが、今日の作業は以上で終了!更衣室で着替えたあとは、牛の管理データを見ながら荒井さんと団らん。
荒井登喜子さんは愛知県からここ上士幌に嫁いだことをキッカケに、それまで全くの未知だった酪農の世界に足を踏み入れ、これまでご主人と二人三脚で荒井牧場を作ってこられました。
荒井さんご自身もこちらに来て初めて酪農を知り、やっていくうちに酪農の魅力に気付いたんだそうです。今は機械化のおかげで肉体的な負担も減り、昔のように24時間365日休みがないということはありません。「しっかりやっていれば経済的にも安定するし、休みはあるし、牛は可愛いし、良いことだらけだよ!」荒井さんはそう語ります。
「若い人たちに実際の酪農現場を見てもらって、少しでも酪農のイメージが変われば」そうした思いで、今回私たちに仕事のご依頼をいただきました。
私も今回人生で初めて酪農家さんのお手伝いをさせていただき、牛たちの可愛さと強さに触れ、動物を扱う仕事の責任の大きさを感じると同時に、その面白さも強く実感することができました。
上士幌に来ていなかったらおそらく一切酪農のことを知ることもなく、牛と触れ合うこともなく、経済動物として生きる牛の一生について考えることもなく、過ごしていたことでしょう。もちろん私がお手伝いした作業は全体のごく一部ではありますが、それでも酪農が一気に身近に感じられるようになり、大変貴重な経験になりました。
ちなみに、私たちJICA訓練生4人はこの牧場の仕事がみんな大好き。自分の番が来る日を楽しみに毎日を送っています。
かみしほろ人材センターではこうした酪農家さんのお手伝いなど、普段できないようなお仕事の依頼が来ることもあります。私自身も今回荒井牧場さんで働いたことで、酪農の現場を少しでも知ることができ、そしてかわいい牛たちに触れ合えて、本当に良い経験になりました。
荒井さん、ありがとうございました!モウくんも今日はいろいろと教えてくれてありがとう!
かみしほろ人材センターで酪農にチャレンジ!(前編)~餌やり編~
まちづくり会社が運営している「かみしほろ人材センター」では、上士幌町の法人・個人から短期で簡単な仕事の依頼を受け、人材センターの会員の方に仕事を紹介する仕組みがあります。
私たちJICA訓練生は昨年12月より、町の困りごとを解決すべく人材センターに登録して、さまざまな業務にあたってきました。
そんな中、「仔牛のミルクやりを手伝ってほしい」という依頼を受けたのが12月上旬のこと。酪農知識がゼロの私たちですが、せっかくの機会なのでと、12月13日よりJICA訓練生4人が日替わりでお手伝いに行ってきました!
WRITER
中山 舞子
1992年生まれ。千葉県在住。青年海外協力隊としてインドに派遣予定。海外派遣の目途がたたない現在、上士幌町に5ヶ月間滞在中。外からの目線で上士幌の魅力を掘り下げて行きます!
早速、牧場へ
「牛のミルクやり!? やってみたい!」そう二つ返事で答えたはよいものの、牧場のお手伝いどころか、観光牧場でソフトクリームを食べるくらいの経験値しかない私。しかし何事もやってみないことには成長はない! ということで、とにかくやってみることに。
初めての牧場のお仕事は、ハラハラドキドキ、やってみると驚きと感動でいっぱいでした。
前編では牛の餌やり、そして牛舎で生まれたての仔牛たちのお世話の様子をレポートしていきます。
今回お世話になるのは上士幌町萩ヶ丘地区にある荒井牧場さん。ご夫婦で経営されており、保有する牛は育成牛も含め約230頭。平成28年に最新の自動搾乳機を導入し、機械管理が進んだものの、命を扱う仕事である以上常に牛の状態を気にしている必要があります。そんな多忙なお二人の1日の中で、私たちは15時から17時までの2時間お手伝いに入り、牛の餌やり、寝床のお掃除、仔牛のミルクやりなどをお手伝いしました。
おしゃべりはほどほどにして、さっさと始めるよ~!
あっ、仔牛のモウくん! 今日はよろしくね!(なんで牛が喋ってるの・・・?)
さっそく牧場で働くための恰好に着替えます!
動きやすい服装の上に、外はかなり冷え込むため厚めのウィンドブレーカーを羽織ります。
外作業開始
まずは外にいる牛の餌やりから。最初に生後3〜5カ月程度の離乳したばかりの仔牛たちの小屋へ行きます。
それにしても寒すぎる! この日は約マイナス10度。すでに手がかじかんできました。この寒さの中、平気な顔をして外で生活している牛たちってすごいなー。
あれ、仔牛が一頭もいない!?!?
「今日はみんなどこかに行っちゃったのかなー?」
ひとまず餌の準備をしていきます。
この細長いタンクに餌が入っているんです。
飼料の吹き出し口に手箕(てみ)という柄なしのスコップをセットします。
すると!エサの準備を始めたとたん、牛舎の裏側からすごい勢いで仔牛たちがやってきました。
みんなさすがによく分かってますね~。
餌をほしそうにこちらをジロジロ見てきます。レバーを上げると餌が勢いよく出てくるので注意!
手箕に一杯入れたらそれぞれの場所に置いていきます。仔牛たちは警戒しているのか、餌をやっている途中もそこまで近くには寄ってきません。
なかには人懐っこい仔牛もいます。餌を一生懸命に食べる仔牛たちが可愛くてずっと見ていたい気もしますが、時間に余裕はありません。どんどん次にいきましょう。
次はさっきより少し大人の、月齢6カ月程度の牛たちに餌をやります。
僕たちはこのデントコーンの餌が大好きなんだ。でも栄養が偏らないようにサイレージという牧草を発酵した餌もちゃんと食べるよ。
先ほどの要領でこの子たちにも餌を置いていきます! すると、みんな美味しそうにもくもくと食べてくれました! 嬉しい!
おやおや!? よく見ると・・・
定員オーバーだったようです。
「ちょっと~、僕も入れてよ~!」
そんな声が聞こえてきそう。牛にもそれぞれ個性があって、いろんな子がいて可愛い!
次の牛群へ移動します。外の餌やりの最後は、初産を迎える母牛たち。
さっきの仔牛たちと大きさが全然違う! お母さんたちには、なみなみと二杯あげます。
お母さん牛は勢いよく食らいつくから、走りながら餌をあげた方がいいよ!!!
走ります!!!!
あまりの勢いにスコップに頭突きを受け、こぼしてしまいました・・・。
牛は手前から奥までずらりと並んでいますが、手前にいる牛が明らかに強そう!牛の中にも上下関係があるんだろうな~。奥の牛たち、頑張れー!
無事餌やりが終わったら、牧草を牛たちが食べられる位置に寄せます! 寒くて牧草がしばれているせいもあり、かなり重たい。
6カ月の牛たちにもスコップ一杯の牧草サイレージをあげるんだよ。
最後にかき集めた牧草サイレージをさっきの6カ月の仔牛たちにあげたら、外での作業は終わりです! 外の気温はかなり低いですが、いい汗をかいてすっかり体はポカポカです。
お疲れさま! 牛舎に戻るよ!
牛舎内の作業へ
牛舎の中に入ると一番手前に小さな小屋が並んでいます。そこにいるのが生まれたばかりの仔牛たち。
生まれて1週間はまだ力が弱いから、人間の手でおっぱいをあげる必要があるんだ。お腹が弱かったり、体調が優れない仔牛もここにいるよ。
まずはミルクをあげる前に仔牛の寝藁を綺麗なものに交換します。
「ちょっと失礼~!」
運動不足の人や体が硬い人はここで足がつることがあるから注意!
藁を足で外に出していきます。
小屋の中に入ると私を母牛だと思うのか、おっぱいを探し求めて私の腕や体に一生懸命かじりつこうとしてきます。
元気のいい子はかなりちょっかいを出してくるので藁を外に出すのも一苦労。全部出し切ったら、裏側に積んである新しい藁を小屋の中に入れていきます。
仔牛の寝床が作れたら、古い藁を片づけます。
向こうにいる仔牛を見てごらん。生後1週間ほど経って、哺乳に問題がなければ向こうの遊び場に移動するんだよ。
仔牛の首に首輪がついてるでしょ? あれにはセンサーが入っていて一頭一頭の仔牛の状態が管理できるようになっているんだ。
遊び場の一角が囲いになっていて、仔牛が一頭だけ入れるようになっています。
ここで問題だよ!この赤い囲いに入って仔牛がしていることとは何でしょう?
正解はこちら! 自動哺乳期からミルクを飲んでいるんだ。
自動哺乳機はまだミルクが必要な仔牛が近寄ると、牛の乳頭をかたどった飲み口が出てくるようになっており、その仔牛の摂取量に達すると自動的に引っ込んでしまいます。引っ込んでしまったおっぱいをずっと見つめ、鳴きながらもっとほしいと懇願する仔牛を見ているとちょっと切ない気持ちにも。
僕たちは残念ながらミルク飲み放題というわけにはいかないんだ。でも機械化することで仔牛のミルクの飲む量や健康状態もすべてデータで管理ができるから、とても効率的でみんなにとってもプラスなんだって。
ここまでで作業の約半分が終了しました!
外での餌やりは寒いけど、それぞれ牛たちの反応が違っていて面白い。何度やっても飽きません。そしてその後の畜舎の中では、おっぱいを探し求める仔牛たちにたっぷり癒されました。
後編はいよいよメインイベントのミルクやりの様子、そしてなんと、幸運にも滅多に立ち会えることのない牛のお産シーンに遭遇します。最後に荒井さんとお話することもでき、さらに内容は盛りだくさん。ぜひ、お楽しみ!!
農家に嫁いだママたちのホンネ〜農家のママさん座談会〜
上士幌町に広がる十勝らしい畑の景色。皆さんは農家の生活にどんなイメージを持っていますか?今回は、結婚を機に上士幌で生活している3人のママ友さんに集まっていただき、初めて上士幌に来たときの気持ちや町での子育て、農家の奥さんとしての暮らしについてお話しいただきました。
WRITER
苅谷 美紅 (かりや みく)
北海道千歳市出身。テレビ番組ADをしていた東京生活から、青年海外協力隊としてブラジルへ。コロナ帰国後、MY MICHI2期生を経て、取材メンバーとして活動しています。マイブームは朝起きて熱気球を探すこと。
<座談会メンバー紹介>
2016年より上士幌町在住
増田 奈々子さん
30歳、江別市出身、3歳の男の子と1歳の女の子のお母さん。
2009年より上士幌町在住
早坂 友美さん
32歳、帯広市出身、10歳の男の子、7歳の男の子、3歳の男の子のお母さん。
2015年より上士幌町在住
楠 愛美さん
31歳、伊達市出身、5歳の男の子、3歳の女の子のお母さん。
農家に嫁ぐことになったときの気持ち
皆さん、結婚を機に上士幌町にいらっしゃったんですよね?ご結婚される前は、どちらにいらっしゃいましたか?
ずっと帯広です。実家からも出たことありませんでした。
私は札幌で働いていました。
私は大学を出たあと帯広で看護師をしていました。
上士幌町の第一印象を覚えていますか?
実は同じ十勝に住んでいながら上士幌には来たことがなかったんですよね。来て、最初にびっくりしたのが、スーパーの閉店時間が早いこと(笑)。あと町がすごくコンパクトなことにも驚いた記憶があります。
私は、夫とは高校生の頃にバスケ繋がりで知り合ったんですよね。私の地元で下宿をしていたので、当時は上士幌と聞いてもどこにあるのか知らなかったです。
農家に嫁ぐことになったときの気持ちって覚えていますか?
私は社会人になってから夫と出会って結婚したんですけど、特に農家への抵抗はなかったですね。今思えば農家というものがわからなかっただけかもしれないけど(笑)。
ななちゃん(増田さん)、抵抗あったって顔してるね。
…うん、最初はあった(笑)。それまで事務職だったから、そこから畑!?みたいな感じで。
私は子どものころから、お母さんが好きで山登りとかやってたんだよね。看護師のときも友だちと行ってたし。だから上士幌ってきっと自然が多い町なんだろうな、くらいの気持ちだったよ(笑)。
私、今だから言えるけど、結婚して初めて上士幌に来るとき車の中で泣いていました(笑)。
ほんと!?
自分でもなんで泣いてるかわからないんだけど、夫も「なんでそんなに泣くの!?」って(笑)。次の日から夫は仕事だったから、家に一人きりでしょ。それでまた泣いて。「帰りたい」って何度思ったことか(笑)。
来たばかりだと知り合いもいないし大変だよね。
私も最初は家族以外は知り合いもいないし、ずっと一人だったな。結婚してから2年くらいは3日に1回は実家に帰るっていう生活をしてた(笑)。それからJAの女性部に入ったり、あとは子どもが生まれてからかな。少しずつ横の繋がりができていったのは。
農家の仕事のこと、ご両親のこと
農家の仕事を手伝うことに対しては何か思いましたか?
何も知らなかったんですよね。結婚する前に一度だけ畑の作業を見にきたくらいで。植え付けをしていたんだけど、そのときは何してるかもよくわからないみたいな。「うわ、すっごい大きい機械が動いてるなー」という感想だけ(笑)。
ななちゃん(増田さん)は結婚する前に手伝ったりはしなかったの?
全くしてない。何回か家に来たことはあったけど、帯広で食べ歩きとかしていることが多かったかな。上士幌を堪能することは一回もなかった。
じゃあ、結婚してから「畑出るぞ」みたいな?
うん、結婚してから。8月に上士幌に来て12月に結婚式を控えてたんだよね。お義父さんとお義母さんも気を使ってくれて。「今年は畑に出なくていいからね、来たときはのんびりしてて」って言われたけど、家にいても一人だし、畑に出た方が気分転換になると思って1週間くらいで仕事を手伝いはじめた。ちょうど小麦が終わったときだったから、芋掘りからやって。やってみたら案外楽しい!って思ったんだけど、初めてトラクター乗ったときには酔っちゃって…
揺れるからね。
それが一番辛かったかな。二人は酔わなかったですか?
全然酔わない!車酔いとかしないからじゃない?
いや、車酔いは私もしない(笑)。
ちなみに、農家に嫁ぐとなったときに、皆さんのご両親はどんな反応でしたか?
心配はしていましたね。土も触ったことがなかったし。虫も嫌いだし(笑)。畑に出て私の足に大きな蜘蛛が登ってきて大騒ぎしたこともありました(笑)。
増田さんのご両親は?
泣いたことは言わなかったの?
言ってない。親には辛いとか、そういうのは絶対言わない。「頑張ってるよ」って伝えてる。
楠さんは?
私の両親はそんなに心配していなかったですね。
出身の伊達市も農家さんは多そうですよね。
多いですね。それこそ、私の妹も農家に嫁いだんですよ。
え、じゃあ二人とも農家なんですか!?
そうなのさ!
すごーい!姉妹で農家!
だからお互いに野菜を送りあったりもする。こっちからはジャガイモを送って、向こうからは葉物を送ってもらったり。
上士幌に住んでいるとジャガイモは困らないよね。うちは冬は毎日ジャガイモ祭りだよ(笑)。
私、結婚した年に知らずにジャガイモを買ったんだよね。
ええっ!?
結婚したばっかりのときね。なんでわざわざ買ってるの?って言われた(笑)。
あ、でも私も宅配で注文番号を間違えてジャガイモが届いたことがある(笑)。
一番嫌なミスだね(笑)。
農家を手伝いながらの子育て事情
皆さんは普段どのくらい働いているんですか?
私は収穫で忙しい時期とか、出れるときくらいかな。
なんだかんだ、子どもの送り迎えとか毎日予定ありますよね。
そう。送り迎えと病院も多いよね。この前なんて、帯広・音更を3往復したの。
子どもが怪我して、午前中に帯広の整形外科に連れて行ったんだ。その後学校まで送って、音更で買い物してたんだよね。そしたら「お子さんの咳止まらないのでお迎えをお願いします」って。念のため病院に連れて行ってということになったから、また音更まで戻って病院に行ったんだよ。
大変だったね(笑)。
お子さんの送り迎えもあると、農場の手伝いはなかなかできないんですか?
午前中だけとかなら手伝うことはありますね。引っ越してスクールバスになったから、少しは楽になったけど、通院とかで15時に迎えに行かなきゃいけない日も結構あって。午後はちょっと時間が中途半端なんですよね。
まなちゃんは働いてる?
収穫のときとかは普通に働いているかな。忙しい時期は朝は子どもを7時半にこども園に預けて、18時半に迎えに行くから、8時から18時くらいまでは働いてる。
まなちゃんは一番働いてると思う。去年は冬もずっと働いてたじゃん。
え!?冬も?
そうそう。長芋が終わった12月くらいから植え付けがはじまる4月まで上士幌クリニックで働いていたんだよね。今年は行ってないけどね。
お子さんと一緒に畑に出たりもするんですか?
コロナで自粛中は毎日畑までお散歩してました。子どもも体力がついてるから、「畑行く!」って走って行っちゃって私が取り残されたこともあります(笑)。
うちも、畑は行きますね。それこそ夏だったら、ビニールハウスで一緒にトマトやナスを穫ったりします。「これ自分で穫った野菜だよ!」と言うと食べてくれるんですよね。
へー!
なんかいいなあって。これが食育かな、みたいな。
楠さんも畑に連れて行きますか?
連れて行きますね。ずっと家にいるとゲームとかはじめちゃうから、外に連れてトラクターに乗せたりします。
うち、3人いるから誰がトラクターに乗るかでよく揉める(笑)。
トラクターはみんな乗りたいよね。
つい最近もあったんだよね、雪踏みをするのにパパが、「明日俺とトラクター乗る人誰?」って言うと、みんな「はーい!」ってなって。運転席の隣にもう一人座れるトラクターがあって、誰が座るかでひと悶着だよ(笑)。
わかる。うちも乗りたがる。
お手伝いはするの?
今年上の子は植え付けのイモ植えを手伝ったって言ってた。
機械に乗って?
そう。乗りながら手伝ったって。それこそ、ビートポットのときも一緒にハウスに入ってたよ。
うちも最近、上の子がこども園が休みの日になると自分から、「じじばばのところ(畑)に行きたい」って言うようになったな。
へ〜。
でも畑が広いから、連れていってもじじばばがどこにいるのかわからない、みたいな(笑)。
農家のママから見た町の良さ
もう上士幌での生活も慣れていると思いますが、改めて町の良さを挙げるとしたら?
私はやっぱり、こども園無料や医療費無料とか、子育ての補助が手厚いのがいいなあって思います。
漢検や数検も無料で受けられるもんね。そういう補助もありがたい。
子育てはしやすい町だと思う。
あと、冬のんびりできるのもいいなあと。夫が「メリハリがあるから夏頑張れる」ってよく言うんですよね。夏は忙しいですけど、1年を通して生活のリズムがあるから、それもいいなあと思います。
あと星がめっちゃ綺麗ですよね。
うん、本当に綺麗。感動しました、星は。
農村部は街灯もないからね。
星だけでなくて、農家さんだと家の周りでも夕日が綺麗に見えたりもするんですか?
綺麗ですね。特に芋掘りの時期は夕方まで畑にいるので。いつも芋掘りしながら沈む夕日を、めちゃくちゃ綺麗だなって見てます。
朝日もいいよね。それこそ朝4時半とかに畑に出たりすると、朝日がめちゃくちゃ綺麗。
やっぱり景色は綺麗だし、自然が感じられるのはいいよね!
上士幌の外から、上士幌町にやってきた3名のママさん。初めて町に来た当時の一人で不安だった気持ちや、子育てをする中での大変さ、そして、お子さんと畑に出る楽しそうな暮らしを垣間見ることができました。上士幌町に来る前は、東京の大学に行き、大都会で働いていた私ですが、同世代の3名の話を聞いて畑で作物と触れ合いながら子どもを育てるのも素敵だなあと、田舎暮らしへの憧れを抱き始めるのでした。
楠さん、増田さん、早坂さん、ありがとうございました!
上士幌町で落ちている枯れ葉を使って草木染にチャレンジ!
皆さんは、草木染(くさきぞめ)をしたことがありますか?草木染の歴史を調べてみると、縄文時代にはすでに草木染をしていた形跡があったなど、とても伝統的な染物らしいです。そこで今回は、町民の方に教えていただきながら、上士幌町のものを使って初めての草木染にチャレンジしてみました。
WRITER
田中 亮 (たなか りょう)
JICA訓練生。1982年生まれ。茨城県出身。自然が好きで、土や水の分析をしてきました。自然豊かな上士幌町に「個性」を感じています。もっともっとこの町の「個性」を発掘していきたいです。
上士幌町での草木染との出会い
JICA訓練生として、5カ月間上士幌町に滞在している中で多くの上士幌町民の方に出会ってきました。その出会った方の中でなんと、草木染をしている方がおり、興味を持ちました。「草木染を教えてほしい!」思い立ったら即行動です。早速、お願いをして日取りを決めて当日を迎えました。
草木染体験
体験場所に到着すると、目の前にはものの見事な草木染が飾ってあります。
草木染とは、野生の草花や枯れ落ちた葉などを集めて布を染める染め物のことをいうのですが、こちらは上士幌町役場の花壇で咲いていたマリーゴールドで染めたのだそうです。見ごろを終えた花をいただき、1枚の布からカーテンを作ったそう。おしゃれな雑貨屋さんで売っていそうな模様だったので、自分にもこんな作品が作れるのだろうかと、期待に胸をふくらませながら体験がスタートしました。
準備編
準備するもの
布、輪ゴム、ミョウバン、錆びた鉄くぎ、落ち葉、玉ねぎの皮、黒光大豆
布はコットンリネンという生地を使います。耐久性と吸水性に優れ、風通しがよく、肌触りもよい特徴が草木染に向いているそうです。大きい布を用意し、ほどよい大きさにカットします。そして、染める際の隠し味的な要素として、ミョウバンや錆びた鉄釘を入れます。発色をよくしたり、色素を繊維に定着させて色落ちを防ぐ効果があるそう。これを「媒染(ばいせん)」と呼ぶそうです。錆びた釘にもそんな役割があるんですね。
そして、ただ染めるだけではなく、せっかくなので「模様付け」にもチャレンジすることに。輪ゴムを使って模様をつけることができるそうです。輪ゴムを使うときのコツは、「きつく縛ること」。なぜなら緩いと色が染み出て、きれいなコントラストにならないからです。模様付けには割りばしや、タコ糸、ビー玉を使います。どんな模様がでるかはできてからのお楽しみです!
輪ゴムを布に縛っていきます。
全体だとこんな感じになります。
落ち葉編
ここからは染める植物ごとに紹介を進めていきます。まずは落ち葉!落ち葉でもできるという情報を得られたので、上士幌町内の落ち葉を集めてチャレンジしました。
落ち葉であれば、役目を終えた葉ばかりなので、拾って活用することにとても意義深いものを感じます。
さっそく、落ち葉から色素を取り出す準備にとりかかります。ホームセンターなどに売られている玉ねぎ用のネットに落ち葉を詰め込みます。
鍋に水を加え、中火でぐつぐつ煮出していきます。
30分後、落ち葉を取り除き、布を投入し、15分ほど染み込ませます。
その後に錆びた鉄釘を投入してさらに15分漬け込むと・・・
なんと、水玉模様が浮かび上がってきました!!この淡い感じがなんとも言えないですよね。
玉ねぎの皮編
続いて、玉ねぎの皮を使います。こちらも普通は捨てるものですよね。そんな捨てるものが活用できるなんて一石二鳥です。
ちなみに上士幌町で買った玉ねぎを使用していますよ!
玉ねぎの皮に水を加えて煮出していきます。
色が染み出たら、玉ねぎの皮を取り除いて布を入れ、30分ほど煮ます。媒染には、釘とミョウバンをそれぞれ使ってみました。
キレイに仕上げをすると・・・
斜めのラインが入った模様の完成です。玉ねぎは落ち葉に比べて色が濃いですね。ちなみに、どちらも玉ねぎの皮を煮だした液に付けた布です。上側が錆びた鉄釘、下側がミョウバンを使って媒染しました。媒染に使うものを変えただけでこんなにも色が変わるんです!
光黒大豆編
最後は光黒(ひかりくろ)大豆を使用しました。使用するのは、上士幌町で栽培されている黒豆で名前の通り、表面に光沢があるのが特徴です。煮豆や豆腐、お菓子作りに活用されています。いい黒に染め上がりそうですね。
方法は落ち葉、玉ねぎの皮と同じです。
これにはびっくり!煮出した液は黒色でしたが、布に染めると紫色に変わりました。色の変わり具合を見るのも草木染の醍醐味です。
綺麗な紫色。うれしくて、思わず片足も上がってしまいました。
染めた布は軽く水洗いをして干します。
こちらが今回チャレンジした草木染の作品です。時間もそんなにかからず、色の変わり具合をみたり模様をつけたりと、とても楽しかったです。使う材料と媒染の組み合わせでさまざまな色が出せますので、皆さんも身の回りのものを使ってチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
上士幌町でも門松を作っている??北海道緑化樹芸さんに潜入してみました!
日本のお正月といえば忘れてはいけないのが正月飾り。年神様を迎えるために飾られるものの一つに門松がありますが、皆さんは門松がどう作られているのかご存じですか?聞けば上士幌町にも門松の製作をしている会社があるのだとか。僕たちが上士幌滞在中にお手伝いをしていたまちづくり会社が門松を発注すると聞き、この機会に門松作りを見せていただけることに!厳冬の十勝だからこそ行う工程があったりと、とても貴重な場面を見ることができましたので、皆さんにもお伝えしていきます!
WRITER
渡邉 史也 (わたなべ ふみや)
JICA訓練生。1997年生まれ。茨城県出身。上士幌町のあらゆる人、場所、生業に広く目を向け、自分の琴線に触れるものをどんどん紹介していきたいです。
こんにちは。JICA訓練生として、上士幌町に赴任したふみやです。皆さん、今年のお正月はどのように過ごされましたか?私は大量についた餅を消化するべく日々奮闘していました。もし同じ方がいらっしゃいましたら、以下の記事を参考にしていただきますと、さまざまな味をご紹介していますのでぜひ!
門松作りの現場へ
今回伺ったのは、上士幌町にある『有限会社北海道緑化樹芸』さん。普段は土木や造園関連の仕事を手広く行っている企業です。
門松を作り始めたのは、約10年ほど前に、帯広にある知り合いの会社から「門松を作ってくれませんか」と依頼があったことがきっかけだったそうです。その後「どうせ作るなら1つ作るのも複数作るのも一緒だから」という理由で、門松作りを始められたそう。
それ以来、主に上士幌町の企業や農家さんに門松を作って販売していますが、個人のお宅でも依頼すれば作っていただけるそうです!サイズの違う門松を4つ作っており、小さいサイズから順に1万円、1万5千円、2万円、2万5千円という価格だそうです。一般的にはもう少し価格が上がるそうなのでリーズナブルですね。
早速、門松製作の現場に。毎年門松を作る際は、こちらの倉庫を使って作業をしています。
今回ご紹介するのは1万5千円の中くらいサイズ。中サイズとはいってもかなりの大きさで、約2.3kgの重さがあります。今年(2020年)の受注数はおよそ70個で、12月21日から作り始めて、12月26、27日の2日間で完成したものから順次配達するそうです。これだけの数を3人で作り上げるということなのですが、一体どうやって作るのでしょうか?
まずは土台作り
早速作り方を見ていきます。まずは土台作りから。
高さ40cm程の塗料の空き缶に、「こも」という藁を編んだものを、空き缶の高さよりも長めにとって巻き付けていきます。ぐるっと一周したら、わら縄を3カ所に縛ります。
縛り方は男結びという縛り方で、結びやすくて解けにくいのが特徴です。
緑化樹芸さん曰く、「こもを縛るのが一番の力仕事ですね。ずっとやっていると指が痛くなって大変です」とのことでした。この縛りがゆるいと見た目が悪くなってしまうので、非常に大変な作業であることがうかがえました。ここで重要なのが、巻く回数と結び目の向きです。
巻く回数は上から順に3、5、7回と決まっていて、割り切れない数にします。さらに真ん中以外の結び目は完成した際に真後ろに来るように縛り、長い部分を切り取ります。真ん中の結び目だけは見栄えのために正面で結ぶのがポイントです。縛り終えたら、今度は余分なこもを外側に広げるように折り曲げ、土台を安定させたらこの工程は終了!
土台に砂を入れて飾りつけ
ここまで行ったら次の工程へ。土台ができたら組み立てを行うのですが、まずは竹や松などを刺して固定するための砂を入れていきます。
この写真では山のように積まれた砂がありますが、じつは隣で乾燥機をガンガンに回しています。それは一体なぜでしょうか?
答えは非常にシンプル!「凍っているから」です!!
土台の中に砂を入れて飾りを固定させるには、まず砂に含まれた水分を完全に飛ばし、サラサラの状態にする必要があります。この時期にはどうしても砂に含まれた水分が一夜のうちに凍ってしまうため、使う分は乾燥させないといけないのだそうです。冬の北海道ならではの工程ですね。
そうして乾燥させた砂を土台に入れたら、ついに飾りつけ作業に入ります。まずは松を刺していきますが、松は複数回に分けて刺していきます。
最初に刺す分は奥側に数本刺し、徐々に扇形になるように広げていきます。ある程度刺したら、今度は竹を刺していきます。
節が真ん中に来るように斜めに切られた竹を3本、それぞれの長さが手前から奥になるにつれて長くなるように調整し、男結びでまとめます。その後、土台に刺していきます。
それから竹の手前に、みずきという冬場になるとほんのり赤く色づく枝と、造花を刺します。ここまで来たらほぼ完成!あとは再び松を扇状に刺し、中に水をかけて砂を固めたら完成です!
ついに完成!
ついに出来上がりました!こんなに素敵に仕上げていただいたのですから、2021年もきっと素敵な年になるはず!早速ハレタまで運んでいただきました。
改めて会社に置かれているのを見ると、お正月らしさが感じられて良いですね!
サイズに違いはありますが、70個もの門松を3人で作っていらっしゃったことには驚きでした。しかし思っていたよりも複雑な工程は少なく、材料さえあれば自分でも小さいものなら作れそうなので、来年は作って飾ってみたいと思います!大きなサイズの門松を飾りたいと考えている方はぜひ依頼してみてはいかがでしょうか?最後まで読んでいただきありがとうございます!
INFO
有限会社北海道緑化樹芸
住所 〒080-1408 北海道河東郡上士幌町上士幌248
電話 01564-2-3572
「オリベの豆や」で豆料理やで~レシピ紹介!
JICA訓練生として上士幌町に滞在している私フミヤは、かみしほろ人材センターの会員として豆農家である関口農場さんから「世界の豆料理を教えてほしい」という依頼を受け、3品の料理を作りました。この記事ではその料理のレシピを紹介します!
関口さんからの依頼記事はこちら!
WRITER
渡邉 史也 (わたなべ ふみや)
JICA訓練生。1997年生まれ。茨城県出身。上士幌町のあらゆる人、場所、生業に広く目を向け、自分の琴線に触れるものをどんどん紹介していきたいです。
今回紹介する料理は以下の3品。それぞれに関口農場さんで栽培している豆を使用します。
・フェイジョアーダ(ブラジル)
・フムス(イスラエル)
・鶏肉のオレンジ煮(日本)
まずは事前に豆を茹でで柔らかくしておきます。それでは順番に作り方を見ていきましょう!
フェイジョアーダ
【材料】
レッドキドニー、パンダ豆、ソーセージ5本、ブロックベーコン、玉ねぎ1個、ニンニク1かけ、赤ワイン、塩適量、ローリエ3枚、コンソメキューブ2個、水、豆の煮汁、オリーブオイル
1. 深めのフライパンにオリーブオイルとみじん切りにしたニンニクを入れて、香ばしい香りがするまで炒める。
フェイジョアーダは煮込む工程があるので、少し深めのフライパンで作るといいでしょう。なるべくオリーブオイルにニンニクの香りを移したいので、火にかけるのはどちらも入れてからにします。
2. 油が温まったら角切りのベーコンとソーセージを入れて、焼き色がつくまで焼いたら一度取り出し、次にみじん切りにした玉ねぎを入れて炒める。
取り出す際はなるべく油をよけて取り出します。フライパンに残った油は玉ねぎを炒めるために使います。
3. 玉ねぎがしんなりしたらベーコンとソーセージをフライパンに戻し、レッドキドニーとパンダ豆を入れる。
ここで登場! レッドキドニーとパンダ豆です。
レッドキドニーは、味はあっさりとしていて癖がないので、さまざまな料理に合わせられる万能な豆です。茹でてもきれいな赤色が変わらないので、彩りとしても活躍します。
パンダ豆は名前の通り、白と黒の2色に分かれている面白い豆です! 茹でるとホクホクとした食感に、やさしい味わいとなります。茹でただけでも美味しい豆ですが、今回はグッと堪えてフライパンに豆を投入します。
4. 赤ワイン、煮汁、水、コンソメ、塩、ローリエを加え沸騰させる。
豆を投入して少ししたら、上記の調味料を入れて混ぜます。赤ワイン、煮汁、水の割合は1:1:1で、具が完全に浸らない程度を目安に入れます。
5. 沸騰したら弱火にして蓋をし、30分ほど煮詰める。
全体にバランスよく味がなじむように、定期的にかき混ぜます。煮詰めきったら完成です! 煮詰めすぎて焦げ付かないように気を付けましょう!
フムス
【材料】
福白金時、練りごま、オリーブオイル、ニンニク半欠け、塩適量、レモン果汁少々、香辛料(クミンパウダー、カイエンペッパー、パセリ等)
1. フードプロセッサーに福白金時、みじん切りにしたニンニク、オリーブオイル、塩、練りごまを入れてスイッチを入れる。
今回使う福白金時は関口さんイチオシの豆です。茹でるとすっきりした味わいの中に少し甘みを感じられ、茹でたままの状態で食べても非常においしいです!
今回は練りごまがなかったので、ごまとごま油を入れて代用します。調味料といっしょに、贅沢な量の福白金時を投入したらスイッチオン!
2. 豆の形が崩れてきたら煮汁とレモン果汁を少量入れて再びスイッチを入れる。
レモン果汁の量はお好みですが、大さじ2杯くらいを目安とすると良いと思います!
3. しっとりとするまで煮汁を少しずつ入れて調整する。
煮汁は一度にたくさん入れるのではなく少量を追加、撹拌を繰り返します。しっとりしてきたら一度味を確かめ、味が薄かったら塩を入れて撹拌します。
4. 皿に平らに盛り付けたらオリーブオイルをまわしかけ、香辛料をかける。お好みで豆を乗せてもgood!
完成です! 今回はクミンパウダー、カイエンペッパー、パセリをかけてみました! さらに余ったレッドキドニーとパンダ豆を散らして芸術点を高めます。なかなかの仕上がりになったのではないでしょうか?
鶏肉のオレンジ煮
【材料】
手羽元、長ねぎ1本、黒千石大豆、ごま油、塩、酒、タレ(オレンジジュース200cc、水200cc、ママレード40g、ケチャップ30g、醤油15g、はちみつ20g)※「中村屋」レシピ参考
1. 手羽元に切れ目を入れ、塩と酒を振って下味をつける。
手羽元の皮目を下にして、骨に当たるように包丁で切れ目を入れます。中まで火が通るようにするのと、味をしみ込みやすくするのが目的です。手羽元は煮込むので、下味は最小限にします。
2. 黒千石大豆をフライパンで炒って香りを出す。
ここで黒千石大豆の登場です! この豆はほかの料理で使った豆と違い、炒って香りを出すことが目的になります。またサイズも小さいため、前日からうるかしておく必要もありません。温めたフライパンに入れて放置し、パチパチとした音が鳴ってきたら次の工程に進む合図です。
3. 黒千石大豆を取り出し、ごま油を入れて温まったら手羽元を焼く。
炒った黒千石大豆は非常に香ばしい香りがしています。実際に食べてみると、カリッとした食感と共に広がる香りが最高です! 手羽元は皮目を下にして、こんがりと焼き色がついたらひっくり返しましょう。
4. 全体に焼き色がついたら手羽元と黒千石大豆を鍋に移し、タレと一緒に中火で煮込む。
黒千石大豆の香りがタレと合わさり、いい香りがしてきます。あとは火加減を調整して待ちましょう。
5. 沸騰してきたら弱火にして40分程度煮込む。
弱火にしたら後は蓋をして放置します。一番弱い火力で長時間、それがお肉を軟らかく煮るコツです。
6. 白髪ねぎを添えたら完成!
できました! 煮込んだ黒千石大豆も柔らかくなり食べやすくなっています。香ばしい香りが損なわれることもなく、豆だけで食べてもおいしい仕上がりになっています!
今回ご紹介した3品はいかがでしたか? 私自身、豆については全然知らなかったのですが、今回の企画を通してさまざまな種類の豆について知ることができました。知れば知るほど奥深い豆の世界。皆さんも、オリベの豆やさんの豆を使って豆料理を作ってみませんか?
「オリベの豆や」で豆料理やで~「世界の豆料理を作ってほしい!」に応えました!
ことのきっかけは1本の電話から。2020年12月にJICA訓練生で行った「町内の方々の困りごとを、訓練生が人材センターの会員として自分たちの得意分野を活かして解決します」という企画を進めている中で、「豆料理を作ってほしいという人がいるから連絡を取ってみて」とのお話がありました。JICA訓練生の料理担当として、初めての料理の依頼に小躍りしながら連絡を入れると、「詳しい話を聞かせてほしい」とのこと。早速伺ってみました!
WRITER
渡邉 史也 (わたなべ ふみや)
JICA訓練生。1997年生まれ。茨城県出身。上士幌町のあらゆる人、場所、生業に広く目を向け、自分の琴線に触れるものをどんどん紹介していきたいです。
豆のプロに豆料理を教える!?
おはようございます! 関口さんですか?
そうです! おはようございます。渡邉さんですよね?
はい! よろしくお願いします。早速ですが、詳しいお話を聞かせてください!
この時点では、まだ関口さんが普段何をしている方なのか気づいていませんでした。
豆料理を作ってほしいとのことですが、なぜ豆料理なんですか?
私、関口農場という農家で豆を栽培しているんです。豆を作るだけでなく、豆を使った料理にも興味があって、もっと世界中の豆料理を知りたいと思っていたときに、世界の料理を作れる人がいるよって話を聞いたんです
そうだったんですね! あれ? もしかして関口さんって『オリベの豆や』の関口さんですか!?
そうです!
なんと依頼してくださったのは『オリベの豆や』というブランドを手掛けている関口嘉子さん。大豆、小豆、インゲンなど、およそ20種類の豆を栽培、販売しているだけでなく、豆のピクルスや豆のふりかけといった加工品の製造販売もしています。
2009年に大阪からここ上士幌町の農家に嫁いだ関口さんは、その当時家庭菜園すらしたことがなかったそうです。しかしお義母さんから豆の育て方を教えてもらったことがきっかけで、豆の魅力に目覚めたとのことでした。
関口さんの豆に対する探究心はとても強く、今回世界の豆料理を作ってほしいと依頼したのも、「自分が知らない豆料理を知ることで、今後の栽培にも活かしたい」との思いからだったそうです。
そのような理由から始まった豆料理企画ですが、豆のプロに豆料理をふるまう経験なんてありません。安請け合いが得意技とはいえ、ちょっと軽率だったかなと思う反面、絶対にやり遂げたい! という思いが湧いてきました。
必死に記憶をたどり、そういえばこんな料理があったな、と思い出します。
決めました! 作る料理はこの3品にします!
・フェイジョアーダ(ブラジル)
・フムス(イスラエル)
・鶏肉のオレンジ煮(日本)
また後日作りに伺いますね。楽しみにしていてください!
食べたことのない料理ばっかり! 楽しみです! 使ってみたい豆とかありますか?
では、色鮮やかな豆と、白い豆、あとは黒千石大豆をお願いします
分かりました。また後日、楽しみにしてますね
3品の豆料理を作ることに決め、当日を迎えます。
作った料理はこちら!
まず1品目はフェイジョアーダ。
ブラジルでよく食べられている、豆とさまざまな肉をワインなどで煮詰めて作る料理です。
2品目はフムスという、中東で食べられている豆のペーストです。
クリーミーな味わいで、パンや生野菜に付けて食べられることが多いです。
3品目は手羽元と黒千石大豆のオレンジ煮です。
これは海外の料理ではないのですが、私が上士幌町にきて間もないころ、「中村屋」に宿泊した際に夕食で出てきた料理です。そのおいしさを忘れることができず、しばらく黒千石大豆を探し求めたほどでした。
料理開始!
そして迎えた当日。さあ、料理開始です!
まず最初に、豆を茹でて柔らかくします。豆料理は基本的に、この茹でる段階を経てからようやくスタートラインに立つことができます。茹でた豆は3種類、それぞれ20〜30分ほど茹でました。
関口さんは豆料理を作るために前日から使用する豆をうるかしておいてくれました(「うるかす」は北海道で使われている方言で、「水に浸けて水分を吸わせる」の意味)。
豆は事前にうるかしておくことで、茹でたときに熱が伝わりやすくなり、煮えムラもなく早く茹で上げることができます。
こちらは福白金時。和菓子の材料などにも使われる豆です。今回はフムスに使います。
そして茹ででいませんが、黒千石大豆は鶏肉のオレンジ煮に使用します。詳しいレシピや作り方は別の記事で紹介しますね!
出来上がりはそれぞれこちらです!
いざ、実食!
料理が出来上がり、早速関口さんに味をみていただきます!
まずはフェイジョアーダから。
いかがですか?
おー、これはご飯が食べたくなる味ですね(笑)
そうなんです! ブラジルではフェイジョンという肉を入れないバージョンがあって、そっちの方が一般的なんですよね。ですが今回はご飯に合うように肉を入れた方を作りました
なるほど。次はフムスをいただきます・・・うん、おいしいです! 口当たりはなめらかですけど、ニンニクが効いた濃厚な味なんですね。フムスって初めて食べましたけど、ピタパンに入れたりしてもおいしそうです
確かにフムスはアレンジのしがいがあって面白いですよね! 温野菜に付けて食べてもおいしいと思います!
じゃあ最後にオレンジ煮をいただきます・・・うん! これは面白い味付けですね。うちではまず考えもしない味付けでしたけど、オレンジの風味も残っていておいしいです
ありがとうございます! 鶏肉をオレンジジュースで煮ると、オレンジの甘酸っぱい味がお肉にしみ込んで、あっさりとした味になるので食べやすくなるんですよね。炒った黒千石大豆も入っているので、かなり風味豊かに仕上がっていると思います!
全部おいしかったです。依頼して良かったです。こちらこそありがとうございました!
後日関口さんから「教えてもらった料理を自分でも作って家族に振る舞いました」と連絡をいただきました。そのときに「息子も喜んで食べていましたよ!」と嬉しい言葉が!
初めての料理企画でしたが、お子さんにも喜んでいただけたので、成功したと言えると思います。私が提案した料理が関口さんのお役に立てたこと、とても嬉しかったです! ご依頼ありがとうございました!
今回作った料理の詳しいレシピはこちらです!
十人十色の餅の食べ方!?餅つきをしてみました!
2021年になりましたね。今年の干支は丑年です。昨年から上士幌町に滞在している私たちJICA訓練生も、今年はこの町で新年を迎えることに。牛さんがたくさんいる上士幌町で迎える新年は良い1年になる予感がします。そしてお正月にはお餅をついて食べたのですが、今回はさまざまな地域の人が集まったということもあり「そんな食べ方あるの?」という驚きが沢山ありました。
WRITER
瀬谷 友啓
JICA訓練生。栃木県出身。自然溢れる北の大地で景色を楽しみ、人と話し、美味しいものを食べる。さまざまな機会に触れて、町の魅力を感じて自分の言葉で伝えることができたらいいなと思っています。
お正月にお餅を食べる意味
皆さん、お正月といえば何を想像しますか?
町の方にお聞きすると、「お雑煮を食べて、家族で初詣に行っておみくじを引いて、親戚のお家にご挨拶に行ったらお年玉がもらえたりね。毎年、そんな感じかな」とおっしゃっていました。
僕のイメージは「こたつに入り、家族で一緒にお雑煮を食べる。初詣に行き、出店でお汁粉を食べる。家に飾っていた、鏡餅を食べる」。北海道の家庭はこたつがない家庭が多いそうで、こたつに憧れている方も多いのだとか。
とはいえ、どれもお正月らしいですし、お餅を食べるというのは共通点でした。
お正月に餅を食べるのは、平安時代に宮中で健康と長寿を祈願して行われた正月行事「歯固めの儀」に由来するらしいです。もともと餅は、ハレの日に神さまに捧げる神聖な食べ物でした。また、餅は長く延びて切れないことから、長寿を願う意味も含まれています。
そんなとき、上士幌生活でとてもお世話になっている高橋農場さんから餅つきにお誘いいただいたので、お伺いすることに。僕自身、子供の頃に町内会の行事以来だったので、10年ぶりの餅つきです。年始早々ご利益がありそう!
餅つきスタート
今回は事前に準備してくださっていて、到着したときには餅米を蒸している最中でした。ありがとうございます!
蒸し時間は35〜40分程度だそうで、既にもくもくと白い煙が上がっており、餅米のいい香りがします。もうこの時点で美味しい匂いが充満し、食べたときを想像して、幸せな気分になりました。
薪を絶やさずに、温度を一定に保つことが餅米を美味しく蒸すポイントとのこと。薪ストーブの上に何やら銀色の棒が見えます。
「こまい!!」
薪ストーブの上に網を置き、こまいが焼かれていました。
こまいは僕が北海道に来て、感動した食べ物の一つです。大好きな「こまい」が遠赤外線効果でさらに美味しく焼かれていたのです。早く食べたい。こまいはタラの仲間で、一般的には「氷下魚」という漢字が用いられます。氷が張った海の下にいるこまいを氷下待網漁で獲ることからその名が付いたと言われています。
高橋さんも「薪ストーブで焼いて食べてみたかった」と、僕と同じこまい好きとして、美味しいこまいの焼き方を探究するべく、薪ストーブの上に置いてみたのだそうです。
こまいを堪能していると、餅米を蒸し始めて30分が経過していました。美味しいものを食べていると時間が過ぎるのが早い。
40分が経ち、蒸し終わり、中身を確認します。
「ファ~、もくもく」餅米の甘い、いい香りが広がります。
食べてみると、餅米に芯がなくなり、良い感じの蒸し具合に仕上がっていました。そして熱いうちに臼に移します。これで餅をつく準備は完了です。
いざ、餅つきスタート!
臼に入れた餅米ははじめはつかずに、体重をかけて杵でぐいぐいと潰していきます。臼のまわりを回りながら均一に潰します。
徐々に餅に近づいていき、粘り気がでてきました。なかなか大変な作業です。
均一に餅米を潰すために、手水をつけて縁に出てきた餅米を内側に入れます。
餅米全体を丁寧に潰すことができたら、ここからはつく作業がはじまります。杵を使って餅をつくには「力を入れすぎず、振り上げた杵の重さを利用して、落とすようにつくのがポイント」だそうです。
えい!
よいしょ、よいしょ!
かけ声にあわせてリズムよく餅をついていきます。
よいしょ。
それぞれ休憩を挟み、交代しながら素早く進めていきます。
「良い感じでしょ?」と思わずドヤ顔をしたくなります。
餅米の粒感がなくなり、全体がなめらかになれば完成です!美味しそう!
いただきます!
つきたてのお餅をいざ、実食!食べやすい大きさに分けます。
はじめは髙橋さんが用意してくれていたお汁粉からいただきます。
「美味しい!!」
餅つきで疲れた体に甘くて美味しお汁粉が染みました。
王道の一つ、きなこです。個人的にはきなこが一番好きです。
大福も作りました。こちらのあんこは、前日に僕たちが上士幌町産の小豆で作りました。
「餅を伸ばして、あんこを入れて」完成しました!
あんこの甘さだけでなく、自分たちで作った大福はよりいっそう味に深みを感じました。
お餅には地域それぞれの食べ方がある
僕たちJICA訓練生はいろいろな地域から上士幌に来ていることもあり、餅つき当日を迎える前にどんな餅の食べ方をしているのかをお互いに披露していると、全然知らない食べ方が出てくる出てくる。ということで、当日にそれぞれの食材を持ち寄って、地域ならではのお餅の食べ方をしてみることに。
納豆
市販の納豆にタレを入れて混ぜて、のせるだけ。
納豆と聞けば、どこの地域の食べ方かおわかりの方も多いでしょう。そうです、茨城県の食べ方です。でも、東北や北海道でも主流みたいです。納豆の旨みと餅の甘さが相まって美味しいです。ご飯に納豆をかけて食べるより甘さが引き立ってクセになりそう!
北海道の人は納豆で食べることに違和感がない人も多かったのですが、関西人には少し違和感のある人もいるようでした。
とろろ昆布
とろろ昆布を乗せ、醤油をかけて食べます。
僕は大学時代に、昆布の消費量全国上位に入る富山県に住んでいて、そこでは、とろろ昆布をおにぎりや味噌汁などいろいろなものに入れて食べていました。餅にのせて食べても、もちろん美味しいのです。
生ハム
「餅に生ハム?」と思われる方もいると思いますが、これがおすすめです!
食べ方は、餅に生ハムを巻き、オリーブオイル、黒こしょうをかける。日本伝統のお餅に、もこみちばりにオリーブオイルをかけるなんて、文化への冒涜かと思いましたが、日本文化の良いところはなんでも取り入れてしまうところ、美味しければそれはお餅文化として成立しています。
こんな風に餅に巻いて
見た目もいい感じ。串屋さんで「モチベーコン」って食べたことないですか?それと同じ感じです!美味しい!
大根おろし
大根をすり下ろし、醤油を適量。さっぱりとして美味しいです。お口直しに挟むのに最高だなと感じた食べ方でした。
鮭
ここまで来たら、もうお餅と白米との違いがわからない。白米に乗せて食べるものは、お餅と一緒に食べても全て美味しいのかもしれません。鮭の食べ方は、塩鮭を使い、焼いて、餅にのせて食べる。やっぱり白米と同じです。
茨城県筑西市周辺の一部の家庭で食べられているそうで、餅と鮭のバランスが良く、鮭のほどよい塩加減が餅の旨さを引き立て、止まりません。
本来は鮭の身をほぐして食べるそうですが、待ちきれず、そのままのせて食べてしまいました。
なにはともあれ、とにかくお餅は美味しい!今回は二臼つき、さまざまなバリエーションで食べることができました。今年は年始早々、お腹いっぱいお餅を食べることができて幸せでした。今年は良い1年になる気がします。皆さんもいろいろな食べ方を試してみてください!
教育委員会主催!大学生と一緒に遊んで、学ぶ【上士幌町まなびの広場】
上士幌中学校の冬休みが始まった12月25日から28日、そして1月8日から10日の計7日間、「生涯学習センターわっか」では、上士幌中学校1〜3年生を対象に自学自習のサポートをする【まなびの広場】が開かれていました。
WRITER
苅谷 美紅 (かりや みく)
北海道千歳市出身。テレビ番組ADをしていた東京生活から、青年海外協力隊としてブラジルへ。コロナ帰国後、MY MICHI2期生を経て、取材メンバーとして活動しています。マイブームは朝起きて熱気球を探すこと。
ワークショップ
まなびの広場に行ってみると、ワークショップが行われていました。まずは、「ドローンで学ぶSDGs講座」。
世界ではSDGsの達成に向けて貢献しているドローンがあることを学びながら、世界中の課題を解決するためのドローンのアイディアをみんなで考えました。
また、まなびの広場の開催期間中はドローンが10台用意されており、勉強の合間にドローンを飛ばして息抜きをしていたのが、とても楽しそうでした。
他にも、数学で「遊ぶ」という、数学クイズのワークショップが行われ、クイズ大会をした後は、自分たちで数学を使ったクイズを作りました。中学生が作った数学クイズは、中学校の図書室に掲示される予定だそうです。
このワークショップでは、1人1台タブレット端末が用意され、中学校で配布されたチラシのURLを使って、自宅からも受講することができました。オンライン中継での授業を初めて体験したそうですが、チャットを利用して質問に答えたり、マイクを使って講師の方と会話をしながら、数学クイズ作りに励んでいました。
自習室開放
先に紹介したワークショップはまなびの広場の一部。まなびの広場では主に、自習室の開放を行なっています。
自習室では、学校の宿題や自分で持っているテキスト・問題集はもちろん、タブレットの貸し出しで学習アプリを使って勉強することもできます。中学生が、好きな時間に来ては自主的に学び、好きな時間に帰るという場所の提供をしているのだそうです。
中に入ってみると、大学生のお兄さん・お姉さんが勉強のサポートをしています。
学生スタッフの服部さんに、質問をしてみました。
中学校の頃の勉強って忘れちゃってないですか?私は全然教えられる気がしなくて…。
もちろん私たちスタッフもそれぞれ得意・不得意があります。なので、教えてあげるのではなく、一緒に考えよう!という姿勢で取り組んでいます。あくまで、子どもたちが自分で考えられるようにしたいんですよね。
学生スタッフの皆さんは、教えるのではなく二人三脚でサポートしてあげることを大切にしているのだそうです。中には、学生スタッフが手作りの問題やテストを作成してくれたおかげで、毎日このまなびの広場に通い、大嫌いだった勉強を頑張るようになったという中学生もいました。
学生スタッフのほかにも、普段は上士幌高校にいる社会教育推進員の明石さんや、上士幌中学校にいる学校魅力化推進員の中津さん、ICT推進教諭の深川さんといった、上士幌の学校現場で活動する方々も運営に携わっていました。
まなびの広場の始まり
まなびの広場は今回で4回目。まちづくり会社が教育委員会から委託を受け、【NPO法人いきたす】が企画運営をしています。NPO法人いきたすは、現役の大学生たちが、中学生・高校生と一緒に進路や将来の夢、悩みなどについて語り合う『カタリバ』という出前講座を行っている団体です。まなびの広場では、その団体で経験を積んだ大学生たちがスタッフとして中学生の勉強をサポートしてくれます。
NPO法人いきたす代表の江口さんに、このまなびの広場が始まった経緯をお伺いしました。
今は、学校教育を教室での枠にはまりきった勉強の仕組みから、例えば、学校の外に出たり、外の人を学校内に取り込んだり、といったような学びのスタイルの変化が全国的に起こり広がりをみせています。
教室で黒板があって、クラスの全員が一斉に同じ授業を受けるという画一的な仕組みから、個別にわいわいがやがやしながら学びを得るといったイメージへの変化ですよね。そんな中、それまでやっていた上士幌町公営塾から、学校授業の延長のような勉強要素を残しつつ、学びのスタイルに変化を作りたいという相談を受けてまなびの広場が始まりました。
自主的に勉強をする自習室の開放、ワークショップの開催など、学校とは違う切り口で学びの提供が行われているのは、まなびの広場が「学びのスタイルに変化を作りたい」という思いで始まったものだったからなのですね。
最後に
学校のない休み期間ですが、まなびの広場で友達と会ったり、大学生のお兄さん・お姉さんと一緒に勉強したりするのが楽しいという中学生たち。学生スタッフとの交流、帰り際の「また明日ね!」、そんなやり取りが、とても微笑ましく感じました。
まなびの広場の皆さん、ありがとうございました!
ナイタイ高原を歩く
十勝在住の方はもちろん、十勝に観光できたなら、必ずおすすめに上がると言っても過言ではないナイタイ高原。十勝平野を北側から一望できる唯一無二と言える絶景スポットだ。
WRITER
渡邉 史也 (わたなべ ふみや)
JICA訓練生。1997年生まれ。茨城県出身。上士幌町のあらゆる人、場所、生業に広く目を向け、自分の琴線に触れるものをどんどん紹介していきたいです。
あるく??
そんな展望台にいけるということで意気揚々としていたが、なんだか様子が違う。どうやら麓から展望台頂上まで歩くらしい。え?まじ?そんな心の中。
ナイタイ高原は日本一広い公共牧場で、約1,700haという想像もできないくらい広大な土地に約2,000頭もの牛たちが放牧されている。僕は今、その広大な土地の目の前に放り出させれたわけだが、すごいことだけはわかる。数字を言われても正直ピンと来ない。でも、すごい。
道内外から子牛を集めて飼育し、大きくなったら親元に返す、子牛を育てる期間を専門家に託すシステムが取り入れられている。この仕組みのおかげで農家さんの労働負担は減り、元気に育つ牛も増えるので、牛の増頭にもつながるっているそうだ。ちなみにナイタイ高原とはアイヌ語で「奥の深い沢」を意味している「ナイ・エタィエ・ペッ」が変化した「ナイタイ川」からきているらしい。
そんな展望台にいけるということで意気揚々としていたが、なんだか様子が違う。どうやら麓から展望台頂上まで歩くらしい。え?まじ?そんな心の中
ふもとから頂上までの道はしっかり整備されており、車で頂上へ行くならひたすら道なりに進むだけでいい。頂上には2019年6月にオープンしたばかりのナイタイテラスが建っており、そこでは昼食を食べたりお土産を購入したりもできる。今回はナイタイ高原の入口ゲートから頂上のナイタイテラスまで標高800mのドライビングロードをひたすら歩くことになった。その距離なんと7㎞。ほんとに歩くんですか?
颯爽とした風景
頂上までの道を歩き始めてすぐに気づく。暑い!その日は8月28日、スタートしたときの時間はおよそ11時。すでに日は高く、上士幌町の最高気温は31.7℃を観測。例年だと30度を超える日なんてまずないので、運がいいやら悪いやら。アスファルトからも熱を感じられるほどの道を進むと気力がどんどん奪われていく。しかしここまで来た以上何としてでも登ってみたい。気を引き締め直して歩き出す。すると見えてきたのは広大な緑と空の青だった。
驚きなのが、この見渡す限りの平原がすべて牧場の敷地だということだ。日本一の公共牧場とは聞いていたが実際にこの目で見てみないと実感できないものだなぁとのんきに考えていた。序盤で見た景色などまだまだ序の口だと知らずに。
その後も予想よりも汗をかきながら彼方まで続く一本道を歩いていると、木陰に涼を求める牛の姿が捉えられた。
彼らは太陽から守ってもらうかの如く大きな木の下に集まり、緑の傘を差してもらっていた。心なしかぐったりした姿を見せている牛もいたが、この雄大な自然の中でのんびりと暮らせるのであれば、多少は我慢もできるはずだろう。彼らはどう思っているのか分からないけれど。
道中にあるヒグマ出没注意の看板や、実際にクマがいた証拠であるフンを見つけたりしながらも、7kmの道のりを順調に進んでいった。
そしてついに頂上のナイタイテラスがその姿を現した。
ナイタイテラスの中に早速入ってみると、今まで歩いてきた軌跡が眼前に絶景として現れた。
この光景を見るために車やバイクに何度も抜かされながらも歩みを進めてきた。
なぜドライビングロードなのにわざわざ歩かなければならないのか。そんなことをふもとで考えていたが、その理由はきっとここまで歩いて登ってきた人にしか理解できないだろう。
遥か先まで見渡すことのできる景色と、この道のりを歩いてきたのだという達成感。これこそが北海道で絶対に堪能するべきことの一つだと胸を張って言える。ぜひその足でナイタイ高原を登ってみよう!
そしてこれはナイタイテラスで販売していたハンバーガー。絶品。
世界80カ国を旅した写真家が上士幌町に移住!その理由とは!?~写真家・伴公夫さん~
上士幌町に面白い写真家がいるらしい。「世界80カ国以上を旅しながら写真を撮り、どこに行くにも常に小さな折りたたみ自転車で移動している、ちょっと変わった写真家が上士幌にいるよ」。そんな噂を耳にしました。それから間もなく、まちづくり会社『hareta(ハレタ)』の交流スペースで噂の写真家伴さんの写真展が開催されると聞き、さっそく行ってみることにしました。
WRITER
中山 舞子
1992年生まれ。千葉県在住。青年海外協力隊としてインドに派遣予定。海外派遣の目途がたたない現在、上士幌町に5ヶ月間滞在中。外からの目線で上士幌の魅力を掘り下げて行きます!
写真家
伴 公夫(ばん きみお)さん
1957年生まれ、愛知県岡崎市出身。趣味はアフタヌーンティーと水彩画。大学卒業後は東京で輸出入のリスク管理の仕事をする傍ら、海外出張時や休暇を利用して海外の風景を撮影する。定年退職後は上士幌町に移住し、写真家として活動を続けている。
『スペイン・グラナダとポルトガル・リスボンの素敵な風景』
写真展は『スペイン・グラナダとポルトガル・リスボンの素敵な風景』というタイトルで、室内にはアルハンブラ宮殿やリスボンのレトロな街並みをはじめとする、たくさんの素敵な写真が飾られています。撮影したのは写真家の伴公夫(ばんきみお)さん。聞けば今回の写真展は2回目の開催だそうです。
どの写真も、今回の企画のために伴さんが特別に厳選したものばかりで、それぞれの写真には伴さんが自ら丁寧な説明書きを加えています。また飾られた写真のほかにフォトアルバムや伴さんの写真集も用意されていて、来訪者はたくさんの写真を楽しむことができます。
さらに今回のイベントは写真を楽しむだけでなく、伴さんがいれた紅茶を味わうこともできるのです! 厨房スペース(ハレタにはカフェもできるように厨房スペースが備えてあります)に目を向けると、忙しく動いている男性の姿が。きっとこの方が伴さんだ!
伴さんは紅茶が好きで、日頃からアフタヌーンティーを楽しまれているそう。「来訪者には紅茶を飲みながらゆっくりと写真を見てほしい」という想いから、写真展と合わせて自ら紅茶をいれて提供しようと企画したのだそうです。
さらに詳しく聞くと、伴さんは元々東京で会社勤めをしながら写真を撮り続けていて、定年退職後の2019年に上士幌町に移住されたとのこと。伴さんはどうしてここ上士幌に移住したのか。そして写真展を開くことになったのか。伴さんという人物について興味を搔き立てずにはいられません。
伴さんにお伺いしたところ、改めてお話をお聞かせ頂ける機会を作っていただけることに。後日ご自宅に伺い、写真部屋にずらりと並んだフォトアルバムを見ながらじっくりお話をすることができました。
中央・東ヨーロッパが旅の始まり
先日のフォトギャラリー、とても素敵でした。グラナダもリスボンも大好きな町なのでじっくり見入ってしまいました。
わざわざお越しいただいてありがとうございました。
写真を拝見して、伴さんにこれまでのことをとても聞きたくなりまして。ぜひいろいろと教えてください。
僕の話でよければどうぞ。
まずは写真家として活動を始められたのはいつからなんですか?
会社員だったので、定年退職したと同時にですね。ただ会社勤めだったときも、出張で海外に行く機会が多くて、あちこちに写真は撮りに行ってたんですよ。
そうなんですね。
それで撮影した写真をパネルにして取引先の方に仕事のお返しなどでプレゼントしていたんですよね。そうしたら、すごく喜ばれて。お酒とかをもらうよりもずっと印象に残るものをもらえて嬉しいと言ってくれることが多かったんです。
プレゼントされたら嬉しいだろうなって、想像するだけワクワクします。お仕事ではどういう国を訪れていたのですか?
アフリカと南米が多かったですね。仕事をしている間で30カ国くらい行ったのかな。ちなみに、学生時代はウィーンに留学していたので、中央・東ヨーロッパばかりを旅行していました。
ウィーンではどんなことを?
勉強目的で国際法を学びに行ったんですけど、結局遊んでばっかりでしたよ。月曜から金曜は授業があったんだけど、金曜の夜からは夜行列車やバスに乗ってヨーロッパに、特に東に旅行に行くことが多かったですね。まだ私がいたころは東西を隔てるベルリンの壁があった時代だったんですよね。
まだ東ヨーロッパの多くの国が社会主義だった頃ですよね。またどうして東に?
ウィーンという町は東側から来る人々が多かったんですよね。たとえばポーランドやハンガリー、ユーゴスラビアとか。西のことは住んでいるだけで情報が入ってくるけれど、東は情報が入ってこないので、じゃあ東の方に行ってみるかと。
東ヨーロッパはどんなところが好きなんですか?
やっぱり風景ですね。まだ観光開発が進んでいないからありのままの自然が残っているんですよね。また、素朴な人々が多いです。最近は中国資本が結構入ってきているみたいだけど。一番好きなのはチェコかな。建築物とかインテリア内装とか。特にプラハの街は好きですね。
写真を始めたきっかけ
写真はいつから始めたのですか?
学生のときです。東京に遊びにきたとき、たまたま池袋の家電量販店の前を通ったら、「お兄ちゃんちょっと」と店長から呼び止められて、話を聞いたら今なら安いよと乗せられて。お店のクレジットカードまで作らされて分割で一眼レフ”NIKON F3”のカメラを買ってしまったんです(笑)。
ははは。お店の思うつぼですね。ちなみにおいくらだったんですか?
19万円くらい
それを高校生で!?勇気ありますねー!そのときからずっと写真がお好きなんですね。独学で学んだのですか?
そうですね、習ったりはしてません。写真雑誌を見ながら。あるいは美術展に行って構図を研究したり。人の写真を見ながら自分で学びました。使っているカメラはNIKONのF3、F5、28Tiという機種。撮るときはいつもフィルムカメラです。一回の旅行で20~30本くらいのフィルムを使って撮るかな。
伴さんにとって写真を撮るとはどういうことなんでしょう?学生のときから長くやられていると思いますが。
まあ生活の一部ですね。趣味です。趣味が転じて生活の一部になったと。
東京で仕事しながらも伴さんの中の「好き」がずっとここまで来て、今はそっちが中心に生活が回っているんですね。
ご自宅の写真室で撮り方をレクチャーして頂く。実際に手にとってみるとものすごい重量感。見よう見まねでシャッター切ってみるものの、ピントをあわせるのも一苦労。
上士幌町に来た理由
自分の好きな場所で好きなことをして第二の人生を過ごすというのは理想的な形なのかなと想像するのですが、伴さんはどうして上士幌町に来たのですか?
社会人のとき、道央・道北・道東に仲間と写真を撮りに来たことがあって。それで定年間近になって第二の人生をどうするかって考えたときに北海道に住むのもいいかなと考えて。北海道は広いから移住センターとかを通じていろいろ探して、北海道がやっているセミナーに何度か参加してみたり。あとは上士幌町がやっている単独セミナーもあるから参加したり。上士幌町は移住者のより詳しい話が聞けるんですよね。役場の話だけという自治体も多いので。
もともと移住願望はあったんですね。
はい。社会人の頃に北海道に写真撮りに来た時から、北海道の風景が好きでした。ここの風景は、特にカナダや中央ヨーロッパとあまり変わらないという印象があって。
スマホで撮影した伴さんが好きな上士幌の春の田園風景。「ヨーロッパのぶどう畑にどこか似ている」と伴さんは言います。
北海道を中心に探していた中で上士幌町が一番良かったと?
上士幌町は「体験に来てください」と何度も言われてとても熱心でした。隣町の足寄町に友達がいて、上士幌の話も聞いていたので、まずは1カ月間の移住体験をすることにしました。
1カ月住んでみてどうでしたか?
6月でしたので、新緑が深くて、3時半から4時くらいには日が登るんですよね。部屋が南向きだったので4時過ぎると強烈な光が入ってくるんですよ。まだ会社員時代の感覚が残っていて、日が入ると「あっ仕事いかなきゃ!」って起きちゃうんですよ(笑)。でも時計見るとまだ朝の4時。やっぱり東京とは違うなと。ノルウェーとかと同じですね。ノルウェー好きなんですよ。あとはカナダも好きですね。
伴さんがカナダとノルウェーが好きって聞くと、こうして上士幌を選んだ理由もわかってくるような気がします。
伴さんが一番好きだというカナダのプリンスエドワード島の写真。辺り一面に畑が広がる広々とした様子はどこか十勝の風景と似ています。
上士幌町に来てどれくらい経ちますか?
ちょうど2020年10月で1年です。
おー!住み心地はどうですか?
暮らしやすいですね。家の密閉性が高いので、昼間は冬にストーブをつけなくても室内は暖かいし、思ったより寒く感じなかったですね。冬なのに室内の最高気温が28度までいったときは驚きました。
世界各国を旅してきた伴さんにとって上士幌の良さってどんなところでしょう?
やっぱり自然ですね!東京にいた頃から自然の中で暮らしてみたいという思いがありましたから。サラリーマン時代は朝6時に起きて出社し、帰宅は終電と、常に時間に追われていました。自分の時間もなく、辞めたいと思うことも少々ありました。だから定年退職後は自分のために生きてみたいと思ったんです。
東京ではお仕事が中心の生活だったんですね。
ここには自然しかない。東京はお金さえ出せばなんでもモノが買える環境だけど、自然はお金を出しても買えないんですよね。この1年はここ十勝のことを知るためにあちこち自転車で見て回りましたけど、自転車で走っていると野生動物に結構な頻度で遭遇するんです。キタキツネやエゾタヌキ、それにエゾリスとか。こないだはクマゲラが道路に倒れてましたね。これからも上士幌に住みながら北海道のいろんなところを回っていきたいです。
伴さんの愛車、ドイツ製の折りたたみ自転車。健康のために伴さんはどこに行くにも自転車です。なんと、帯広までも上士幌から5時間で往復しているのだとか!
写真展を開催するきっかけ
移住してからちょうど1年とのことですが、haretaを知ったきっかけは何だったのですか?
移住をしてしばらくしてからここのイベントにたまたま足を運んだんです。そしたらここでもいろんな情報が集められることがわかって。写真をやっているという話をしていたら、haretaの方が来て写真を見せてもらえないか?とお声かけ頂きました。
今回の写真展は2回目だと伺ってますが、初めての写真展はいつだったのですか?
2020年の8月16日です。そのときはお店に足を運んでくださった皆さんに良いなと思ってもらえるような場所をピックアップして。22点展示しました。
今回はどうしてこのグラナダとリスボンにしたのですか?一番最近に行ったわけではないですよね?
そうですね。スペイン・ポルトガルは日本人に人気があるけど、ヨーロッパの端でなかなかいけないところでもあるから。写真展では足を運んでくれた方が「いいな」「行ってみたいな」と思えるところを選ぶようにしています。ちなみに一番最近行ったのはカザフスタンです。あそこは日本ではほとんど知られていない。だから結構良い自然が残っているんですよ。観光開発がされていないありのままの自然が残っているところが好きですね。
次回の写真展の予定は決まっているのですか?
日程はまだ詳しく決まっていませんが、3回目はベトナムとカンボジアにしようと思っています。
いいですね。万人受けじゃなくて伴さんが個人的に好きな写真も見せてもらいたいです。これから伴さんが思い描く未来はどんなものでしょう?
そうですね、写真展はこれからも時々やっていきたいですね。この前の写真展でアンケートをとったら国内も見てみたいという要望があったので、国内もやってみようかなと思っています。また野生動植物の写真もそうですね。写真を撮りながら、冬の間は趣味の紅茶や水彩画をやったり、ゆっくり暮らしていきたいです。
これまで世界のさまざまな風景を見てきた伴さんだからわかる上士幌町の良さ。このゆったりと流れる時間と、辺り一面に広がる畑の風景。東京勤めだった私も、「四季折々の自然を肌で感じることができ、さまざまな北海道の野生動植物に触れられる。そんな場所にいられるって幸せなことなんだな」と、伴さんのお話を聞いて改めて気付かされました。
新型コロナウイルスにより海外への渡航が制限され、なかなか人生思い描いたようには進みません。それでも今いる北海道という土地にはまだまだ見たこともないような素敵な場所があるのだと思います。
私も伴さんのように、ここ上士幌に溢れる素敵な風景を撮り逃さないよう、一つひとつ心にとめて毎日を過ごしていかなければと感じました。伴さん、ありがとうございました。
気持ちいいぞ! 薪割り体験!
「スパーンッ!」
薪が綺麗に割れるとそんな音が聞こえてきます。
そして残った手の感触はとても軽いです。
「バチーンッ!」
そんな衝撃音が全身に響き渡るときもあります。手はビリビリ。その薪割りは失敗です。斧の入る角度が真っ直ぐじゃないときによく起こります。角度を調整して再チャレンジ!私たちが上士幌町で参加した「MY MICHIプロジェクト」で行った薪割り体験をレポート!
WRITER
澤田 遼
MYMICHI2期生。愛知県出身。十勝晴れによって照らされる広大な山々とその麓に広がる自然豊かなこの上士幌の景色に心を奪われてしまいました。移住もありかなと考えるようになった今日この頃です。好きな言葉は「今日が1番若い」。
四戸家名物「無限薪割り」
この日は上士幌町認定保育園ほろんで保育士をされている四戸(しのへ)智昭さん(31歳)のお宅にお邪魔して薪割り体験をさせていただきました。
四戸さんのお宅に到着すると、そこには四戸さんと四戸さんの友人で上士幌町で農業をされている小林悠樹さん(31歳)がいらっしゃいました。
こちらが本日のメニュー。
四戸さんが今日のためにわざわざ作ってくださいました!
無限薪割り(笑)と思い、ふと四戸さんのお庭を見るとそこには細めの丸太からウエストくらい太い丸太までさまざまな丸太がゴロゴロ。
まずは四戸さんによるレクチャー!
斧を振り下ろす位置は慣れるまではこの辺りが良いそうです。あんまり手前だと万が一空振りしたときに斧が自分に当たる危険がありそれを防ぐためです。
そして四戸さんのお手本。
四戸さんにかかるとこんな太い丸太も
スパーンッ!
一発でこんなに簡単に割れてしまいます。かっこいい・・・!!
ここで少し斧の説明を。
斧は物によってマチマチではあるものの、重さは約2キロ前後。2リットルのペットボトルほどの重さですが、斧は刃がその重量のほとんどを占めるため、握りに近い側で持つほどずっしりとしたその重さを感じます。
最初は利き手を柄腹部分に、握りを逆の手で持ってそのまま下ろします。
エイッ!
なかなか四戸さんのようにはうまくいきません。
木の皮だけを切ってしまったり、表面に傷をつけまくり、魔界の模様みたいにしちゃったり・・・。なかなか上手くいかないなぁ。とか言いながら続けること10分ほど。段々続けていくうちに振り下ろした斧が丸太を貫通するようになってきました!
そうなったら次のステップです。
今利き手はずっと柄腹にありましたが、今度は柄腹にある利き手を上に持ち上げたときに握りの方にスライドさせます。
柄腹にある利き手を
振りかぶって
頂上に到達する頃に手をスライドさせて
一気に
振り下ろし体制に入り
あとは丸太に目掛けて振り下ろす!
スパーーンッ!! 気持ちいいー!!!!
割ってすぐの薪は多くの水分を含んでいるため、こうして乾かします。
床を作って空気の通り道を作り、屋根を被せて雨風を防ぎ。そして後は空いてる穴から風を通して干していきます!
乾くまでに大体1年以上かかるそうです。
心の声「1年か、そんなに寝かせておくんだ・・・」
そしてこの写真に写ってる棚分くらいが1年間で使う薪の量だそうです。すごいたくさん!!
薪割りは全身を使って行うため、体がぽかぽかになります。
めっちゃ暖かい!!と言いながら気温2℃の中、上着を脱ぎ決めポーズをとるジミー。
四戸さん宅にはこんな機械もありました。
これは焚き付け作り機です。薪は太いため直接火をつけてもなかなか着火しません。そこでまずは、火をつけるために焚き付けが必要になります。
使い方はとっても簡単! まずはハンマーで薪が自立できるまで叩きます。
きちんと立ったら後はたくさん叩くだけ!
簡単に割れました!
焚き付け用の木材は薪と混ざらないようにコンテナへ。
陽が傾き始めて、たくさん割った薪を乾燥棚に徐々にしまい始めた頃、四戸さんに薪ストーブを始めたきっかけを尋ねると、とても意外な答えが返ってきました。
いつから薪ストーブを使うようになったんですか?
4年前かな。
始めるきっかけは何かあったんですか?
昔から憧れがあったことと、薪の癒しっていうのがまずあるかな。あと仕事で保育について改めて考えていろいろ勉強する機会があって、その知識を家につなげたってところも大きいかな。
そんな機会があったんですね。
そうなんだよね。4、5年前に「ほろん」(上士幌町認定こども園)のすぐ北側に新しく「ほろんの森」っていう広場を作ることになったんだ。どういった場を作るのが良いだろうと思って、そのときにもう1回自分の中で保育について勉強し直したんだよね。都会に負けない、田舎だからできる教育プログラムや経験を積めるような場にできないかなって思って。そこで原体験とか野育とか今話題のSDGsとかを改めて勉強し直したんだよね。
そんなことがあったんですね。
うん。そうしたときにさ、子どもたちが今のこの世の中を生き抜くために一番必要なことって何だろうって思ったら、原点に立ち返って、自然を愛することだったり、資源を大切にするっていうことかなって思ったんだ。そういう思いがあって、ほろんの森には、井戸水を引いて水遊びができる場所や、「忍者小屋」という身長よりも高い石垣を登って遊べる場所や、グラウンドとは少し違う冒険的で継続的で主体的な遊びができるスペースを作ったんだ。それに加えてそこに焚き火のスペースも作ったんだよね。
え、子どもたちが焚き火!? 危なくないんですか?
もちろん大人が見ている前でね。火って暖かいしすごく便利なものだけど、一歩間違えたらすごく危ないでしょ。火に対する危機感とか危機管理能力も育てられたらいいなっていうのがあって。そんなことも伝えられる場所を提供できないかなって思ったんだ。
それが自宅にも活かされたということですか?
そうだね。それで自分の家を建てるときも、もちろん薪の温かさとか癒しもあるんだけど、自分の子供への教育的なところでも薪ストーブを取り入れてみようって思ったんだよね。
まさかそんなかっこいい動機だとは思いませんでした・・・。
ありがとう(笑)。薪が上手く割れた瞬間がたまらなく気持ちいいってのももちろんあるけどね(笑)!
そんな会話をしていると、四戸さんの同僚の鎌田健司さんが到着し、コーヒーの焙煎が始まりました。
Four Houses Coffee Base「自家焙煎」体験 Kama
鎌田さんは、コーヒーの焙煎が趣味だそう。「せっかくだからみんなにも体験してもらおうと思って」と、四戸さんが鎌田さんに声をかけてくださっていたのでした。
嬉しいです・・・! ということで、ここからはコーヒーの焙煎講座に!
さっき割ったばかりの薪・・・はまだ乾燥させないといけないので、前年に四戸さんが割った薪でコーヒー豆を焙煎することに。
ちなみに鎌田さんが自家焙煎を始めたきっかけは、コーヒーが大好きで焙煎豆をたくさん買うけど、毎回焙煎豆を購入するのは金銭的に辛い!! という理由からだそうで、今では生豆を購入し自ら焙煎を行うようになったそうです。これはかなりのコーヒー好きなのでは!?
これがコーヒーの生豆です。白い!!!
これを加熱していきます。
豆全体に熱を加えるために。そしてコーヒー豆の皮を熱で剥くために、熱して振って熱して振ってを繰り返していきます。
この焙煎によってあのコーヒーの香りや苦味、酸味が出てきます。浅めに焙煎すると酸味が多く、深めに焙煎すると苦味が多いといわれているそうです。
それにしても焚き火あったかいな〜!!
焙煎係の人は火のすぐそばに行けるのでちょっとした場所取り争奪戦に(笑)。
中にはフライパンそっちのけで自分の体を暖めはじめる人も・・・(笑)。
だんだんと色が茶色になってきました。うんうんコーヒーの香りもしてきたような!
さらに熱していくと・・・
だんだん黒くなってきたぞ!
熱した後3、4日経つと美味しいコーヒーになるそうで、その日を楽しみしにしながら持ち帰らせていただきました!
袋にはしっかり「回想珈琲 four houses coffee base」の文字が!
17時。最後にみんなで集合写真。
帰り際、「また薪割りしたくなったらいつでもおいで!」と四戸さんがおっしゃってくださいました。
そして仲良し3人組のお写真も撮らせていただきました(左から四戸さん、小林さん、鎌田さん)。
いい表情だなぁ。こうやって肩を組める仲間がいるって素敵だなぁ。そんなことを思いながら家路へと向かいました。
ありがとうございました!!
子どもたちへ贈るクリスマスプレゼント〜夜空を彩るバーナーグロー〜
12月22日、認定こども園ほろんの子どもたちに『サプライズ企画』で元気になってもらおう!というイベントが行われました。題して、こども園キッズに「クリスマスプレゼント」プロジェクトwith上士幌高校熱気球部!!
(冒頭写真提供:上士幌町役場)
WRITER
苅谷 美紅 (かりや みく)
北海道千歳市出身。テレビ番組ADをしていた東京生活から、青年海外協力隊としてブラジルへ。コロナ帰国後、MY MICHI2期生を経て、取材メンバーとして活動しています。マイブームは朝起きて熱気球を探すこと。
企画をしたのは役場の商工観光課、北海道バルーンフェスティバル組織委員会 事務局。このコロナ禍で様々なイベントが中止になり、子どもたちもかなり寂しい日々を過ごしているのでは?そう考えた事務局がこども園の前にある役場駐車場で熱気球を立ち上げるサプライズを企画しました。その様子を写真と共にお伝えします。
今回のプロジェクトでは、認定こども園ほろんの子どもたちへクリスマスプレゼントを渡すこと、そして、赤・白・緑というクリスマスカラーになっている上士幌高校の熱気球「上士幌高校Ⅳ号」のナイトバルーングローが計画されていました。
会場の周りには、アイスキャンドルが設置されています。火が灯され、空が暗くなると、イルミネーションと共にクリスマスを感じさせてくれました。
さらに運ばれて来たのは子どもたちのために用意された、プレゼント。中身はお菓子の詰め合わせだそうです。
こども園の玄関から会場までの道には、こんな看板も設置されていましたよ。
プレゼントは、サンタ衣装を着た上士幌高校熱気球部の生徒たちから子どもたちに手渡されていました。
プレゼントは未就学児を対象にしたもので、こども園の先生方が、プレゼントをもらった子どもたちの名前をチェックし、この日お休みしていた子どもたちにも後日渡されたそうです。
イベントには上士幌町のキャラクターほろんちゃんも登場。サンタ帽をかぶり、マスクをしていました。大人気のほろんちゃん、子どもたちに囲まれていて、とても賑やかでした。
そして、一際目を引いたのが、暗くなった駐車場で上がっていたオレンジ色の炎。
熱気球を空に浮かせるためのバーナーですが、ものすごい勢いで炎が上がるので、子どもたちも興味津々でした。
子どもたちが大きな声で「メリークリスマス!」と叫ぶと、
一斉噴射。バーナーの炎が3本、間近で見ると圧巻でした。
ちなみにこの炎、オレンジ色をしていますが、通常熱気球を飛ばす際の炎は青色をしています。オレンジ色の炎は、牧場の上を飛んでいるときなど、牛を驚かせないために使う小さい炎なのだそうです。暗い夜に、オレンジ色の炎、とても美しかったです。
この日、たくさんの親子が楽しみにしていたであろう熱気球「上士幌高校Ⅳ号」のナイトバルーングロー、結果としては中止となってしまいました。
この日の夕方から夜にかけての天気は晴れ。ですが、風が吹いており熱気球を立ち上げるには決して良い状況ではありませんでした。今回の企画を進める商工観光課の佐藤泰将課長も「一瞬でも風が止めば、一気に立ち上げて、写真だけでも撮りたい」と話し、球皮を広げてその時を待っていました。
そして、17時過ぎ、熱気球の立ち上げを試みるも、風が強く断念。残念ですが、ナイトグローはまたの機会のお楽しみとなってしまいました。
今回、サプライズ企画とのことで、こども園の保護者の皆さんにのみお知らせをしてのイベント開催だったそうです。保育園・幼稚園の無料化など、子育て支援に力を入れている上士幌町。親御さんへの支援だけでなく、このコロナ禍でイベントが減ってしまった子どもたちに少しでも楽しんでもらえるよう、こんなサプライズ企画を行なっていたのですね。おうち時間が増えた2020年、子どもたちにとっては嬉しい思い出になったのではないでしょうか。